事例報告内容
【記述項目】
一般的名称 MRI装置
販売名 不明(MRI装置関連)
製造販売業者名
購入年
事例の具体的な内容 左手関節部のMRI検査を実施。MRI検査室では、検査部位を確認後、寝台にうつ伏せに休んでもらい、検査精度を高める為、目的の左手関節部が装置中央に位置するように患者に左上肢を上げ、左手が頭部上方に位地するよう姿勢を整えた。検査には表在細部の観察に使用されるマイクロコイルを使用する事とし、目的の左手甲の部分にコイルを置き、マイクロコイルのケーブルが患者に当たらないように、左側に回る様にセットし固定した。さらに、動きによる画像のブレを防止する為、左手の上に砂のうを置き固定を行った。患者には、検査中に左手を動かさないでもらう事をお願いし、気分不良や異常が合った場合に知らせるように説明し、コール用ブザーを右手に持たせた。ガントリー中央まで寝台を移動させ、マイクロコイルを受信用ソケットに装着し、検査を開始した。検査は、シーケンスや断層方向を変えて撮像を行い、30 分程度を要した。検査中に患者から異常を知らせるブザーコールや訴えはなかった。MRI終了時に、固定具とマイクロコイルを左手部よりはずしたところ、コイル装着部分である左手甲の発赤に気付いた。こ時点では水泡の形成はなかった。患者に検査中、熱かったかなど、発赤箇所に関して尋ねたが、検査中に熱さはそれほどなく、手の上から押さえられる感じがしていたと言う訴えがあった。検査中に動かない様にするのに注意していて、ブザーを鳴らさなかったとの話であった。左手甲にはコイルを固定したり、砂のうを置いたりしたため、押された感じがしたのであろうと解釈し、寝台のマットも少し汗で濡れていたので、検査中少し熱かっただけなのであろうと思い込み、患者には、少し様子を見て下さいとだけ伝え検査終了とした。 検査終了後に整形外科診察時となり、検査部位である左手甲の手関節付近3cm の紅斑と水疱形成に整形外科医師が気付いた。MRI検査を行って出来たものであるのか、検査中の状況に関する問い合わせがMRI検査室にあり、熱傷を起こしていたことが判明した。左手背の水疱については、整形外科医師が診察し、熱傷の処置を行い、その後治癒した。
事例が発生した背景・要因 MRI検査において人体の一部で高周波電流のループが生じ、熱傷を起こす危険性があることは認識していたが、身体の接触によるループ形成にあたらないと思えたので、原因究明のために他に類似した事例がないかも調べたが、明らかなものはなかった。 装置の始業点検やメーカーによる定期点検は行っているが、事故後すぐに、装置メーカーに連絡を取り、使用しているコイルの状況、装置の状態に問題がないかを調べた。 点検後、コイルやMRI検査装置に関しては、検査で熱傷を起こすような装置異常はなかった。 今回MRI検査で熱傷が発生した原因を明確にするため、装置メーカーには使用したコイルなどで熱傷を起こした事例がないか問い合わせたが、使用したコイルでの事例はなかった。 メーカーと直接ヒヤリングして検査当日のコイルの使用状態などを検討した結果、メーカーからケーブルのループによる熱傷の可能性と、汗による熱傷の可能性があることの報告を受けた。使用していたコイルに関しては、メーカー本社にて更に詳しく調査するため、回収となりメーカーの方針により新しいコイルに交換となった。装置メーカーと検討した結果、コイル装着時にケーブルをループ状にしたことで発生する高周波電流により熱傷が生じたと考えられる。また、汗による熱傷の可能性もある。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・ 検査時にコイルを装着する場合ケーブルがループ状にならない様に十分に注意し装着する。 ・ 汗による火傷を防ぐため皮膚とコイルが直接触れない様に間にガーゼなどを置くなどの対策を行う。 ・ 患者に検査中に異常な熱感や体の異変があった場合には緊急ブザーを必ず押す様に十分説明を行う。

事例検討結果
事例検討結果 MR装置の添付文書には高周波ループによる熱傷のおそれがあることから、コイルケーブルが皮膚に接触しないよう記載されている。 なお、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情報No.25「MRI検査時の注意について(その1)」を作成・配信し、注意喚起も実施しているところ。