事例報告内容
【記述項目】
一般的名称 末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテル
販売名 PI カテーテル キット
製造販売業者名 日本コヴィディエン株式会社
購入年
事例の具体的な内容 上咽頭癌 頸部リンパ節転移のため、化学療法(CDDP+5-FU)を4コース施行。今回5〜6コース目を施行するために半年後再入院。薬剤投与ルートとして左肘部より左鎖骨下静脈に先端を留置し、PICCルートを確保し、同日夜より補液、6日間抗がん剤投与を行った。その後、化学療法後の嘔吐など摂食障害が生じた際の高カロリー輸液のラインとして、へパ生でロックしてルートを残していた。高カロリー輸液を行うことはなかったが、血清クレアチニン上昇を認めたため、水分負荷のため補液ラインとして使用した。ルート確保後の午前10時、点滴が流れなかったため、看護師がへパ生食を注入したところ、直後に左上肢のしびれ感、徐々に同部の鬱血と腫脹が出現した。直ちに看護師より主治医へ電話連絡が入り、主治医は外来診療中であったため、看護師付き添いで患者を外来診察室に連れて行った。 上記所見を認めたが、胸部症状や呼吸苦は認めなかった。外来でPICCルートを抜去したところ、鬱血、腫脹、しびれ感も改善したため、血栓症の鑑別で当日CT予約検査を行い、経過観察とした。同日17時に造影CTを施行したところ、左腕頭静脈〜上腕静脈の血栓形成、右肺動脈の肺塞栓が確認された。20時頃循環器内科へ往診を依頼し、同日抗凝固療法(ヘパリン持続点滴及びワーファリン内服)開始となった。
事例が発生した背景・要因 担癌状態(上咽頭癌 頸部リンパ節転移)、化学療法中で、中心静脈カテーテルを挿入していたため、血栓形成しやすい背景があった。
実施した、若しくは考えられる改善策 1.血栓症の予防として、治療終了後はできるだけ速やかにカテーテルを抜去する。当科の場合、月曜日に開始し5日間持続投与の場合がほとんどで、土曜日の準夜帯に点滴が終了する事が多い。抜去時にカテーテル周囲に付着した血栓を飛ばす可能性も否定は出来ず、その際に迅速に対応できる時間帯として、夜間の抜去は避け、翌日(日曜日)の午前中に主治医もしくは当直医が抜去する。2.血栓症の早期発見のために、カテーテルを挿入している上下肢の腫脹や疼痛などの症状や、胸痛、呼吸苦などの胸部症状の有無について定期的にチェックし、血栓症が疑われる場合には速やかに造影CT検査などを行う。

事例検討結果
事例検討結果 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、当該カテーテル抜去後のCTで挿入血管内の血栓形成と肺塞栓が確認されたとのこと。なお、当該製品の添付文書にはカテーテル留置中の静脈血栓症のリスクが記載されている。