事例報告内容
【記述項目】
一般的名称 長期的使用注入用植込みポート
販売名 デュークス(テルモ インプランタブルポートセット)
製造販売業者名 テルモ株式会社
購入年
事例の具体的な内容 約7年前、悪性リンパ腫と診断。化学療法を施行することになり、末梢静脈ラインの確保が困難であることより、CVポートシステムを留置した。その後外来で化学療法を行った。約4年前、ほぼCRとなり治療は終了した。その後約3ヶ月毎に受診しフォローしていた。約3年前より主治医が交代した。CVポートシステムはそのまま留置していた。 血液内科主治医より外科医へCVポート抜去を依頼し、抜去された。カテーテル抜去時に抵抗あり、ゆっくり引き抜いたところ20cmほど抜去できた。しかし、約17cmが血管内に残ったまま抜去困難となった。 放射線科医師、心臓血管外科医師へコンサルト行った。透視を行ったところ、皮切部から約8cmのカテーテルに石灰化のような陰影あり。当初の皮切から5cm中枢側に皮切を置きカテーテルを露出した。神経損傷を招かないように注意しながら中枢側に剥離し血管刺入部を確認。血管内のカテーテル周囲に石灰化様の組織が付着していた。刺入部の中枢側、末梢側を血管テープで確保し、静脈を長軸方向に石灰して石灰化ごとカテーテルを抜去した。静脈を結紮、創部を縫合した。ガーゼとテープで圧迫し帰宅とした。前腕の腫脹やしびれ、運動障害などは見られなかった。疼痛時のために鎮痛剤を処方した。 翌日、外科再診。摘出したカテーテルを病理診断科医師へ依頼し精査を行った。カテーテルの表面には細かい傷があり一部屈曲していた。自宅で疼痛あり鎮痛剤を内服した。創部は出血なく、感覚障害や運動障害もなかった。創部の圧迫を解除した。 14日後、外科再診。創部問題なし。外科診は終診となる。
事例が発生した背景・要因 1.摘出したカテーテルの表面には細かい傷があり一部屈曲していた。カテーテル抜去時に血栓性静脈炎を発症していた部位にカテーテルがひっかかったと推測される(カテーテルに付着していた静脈の組織診によると、血栓性静脈炎という診断であった)。 2.治療が終了してから約3年間、CVポートシステムを使用していなかった。使用していない期間にヘパリンフラッシュも行っていなかったことより、カテーテルがいつから屈曲したのか不明である。 3.当院では、テルモデュークスCVポートシステムはこれまでもカテーテル断裂が数件発生している製品であるため、今回もカテーテルに傷がついた部分より断裂した可能性がある。
実施した、若しくは考えられる改善策 1.すでに実施していることではあるが、テルモデュークスのCVポートシステム製品抜去時には、断裂や今回のようなカテーテル表面の傷があることから透視化下で慎重に抜去する。 2.事例についてはPMDAへ報告する。

事例検討結果
事例検討結果 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテルの断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されている。また、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情報No.57「皮下用ポート及びカテーテルの取扱い時の注意について」を作成・配信し、注意喚起も実施している。なお、当該事例におけるCVポートカテーテルの留置期間は約4年であった。