【記述項目】 | |
《関連した薬剤》 | |
一般名 | ゴセレリン酢酸塩 |
販売名 | ゾラデックスLA10.8mgデポ |
剤型 | キット |
規格単位(含有量、濃度) | 10.8mg |
製造販売業者名 | アストラゼネカ株式会社 |
事例の具体的な内容 | 皮下注射後腹腔内出血 |
事例が発生した背景・要因 | ゾラデックス3クール目を左腹部(当初左腹部に打つ予定であったが皮下をつまみ上げた際に位置がずれたのか、結果として臍下2横指の所に穿刺することになった)に皮下注後、腹部の疼痛、過呼吸、右側臥位になった後意識レベル低下(300)、血圧62/40まで低下、P 100まで上昇あり。 酸素投与し生食500mL全開投与しP 80台まで戻るも、皮下血腫はないも腹痛や嘔気続き、以降血圧が変動することからゾラデックスによるアレルギーを疑いソルコーテフ 100mg投与。その後血圧100台まで上昇しCTを行ったところ肝表面-ダグラス、後腹膜に至る出血を疑う像あり、腹腔内出血を疑う。読影医は後腹膜まで至る出血のため卵巣出血も疑うとのことであったが、明らかに皮下注射後の出血であり、穿刺針が腹腔内の血管を損傷した可能性が高いと考えられたが、卵巣出血やそれ以外に腹腔内出血をきたす原因も考えられたため、婦人科の緊急手術が可能で、血管損傷があれば血管外科による処置やIVRなどが可能な施設への搬送が必要であること、穿刺時の徐放剤が血管内に投与された場合は過量となり薬剤性ショックになる可能性も考えられること、現時点で出血性ショックに陥っていることをふまえ、3次救急での対応が望ましいと判断し転院し、転院先で緊急手術となった。手術所見としては、腹壁、腹膜、小腸間膜、下大静脈の表面まで貫かれ下大静脈にも損傷があり、縫合修復したと報告があった。患者の状態については出血によるショックはあったが、手術と輸血により改善し無事退院された。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | 一般的な改善策としては、ゾラデックス投与手技の再確認と考える。ゾラデックス投与時に看護師2名にて穿刺部位、穿刺角度の確認。穿刺困難と判断される場合(皮下脂肪がうすい、穿刺で皮膚を貫通し針刺しの危険が予想される等)は、医師に投与を依頼する。または皮下脂肪の少ない患者に対してはリュープリンなど他剤への変更を考慮するなどが考えられる。この事例の患者は痩せ型で皮下注射を実施するにあたり、皮下脂肪がほとんどなく穿刺する際に皮下を摘むことが困難な状態であった。但し、そのような状況であったとしても、薬剤の添付文書には「本剤投与部位周囲から出血し、出血性ショックに至った例が報告されているので、以下の点に注意すること 1) 血管を損傷する可能性の少ない部位を選択すること。」とあるが、この記述からでは腹腔内出血の可能性を想定出来ない。実際、当院でも腹腔内出血の可能性を想定出来ておらず、CT撮影等が遅れた。併せて当院以外の事例としてPMDAへの報告で3例腹腔内出血事例が報告されていることから、腹腔内出血の可能性については「使用上の注意」の「重要な基本的注意」でなく「慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)」の項目、もしくは「重大な副作用」の項目へ警鐘事例として「本剤の投与により腹腔内出血から出血性ショックに至った例が報告されているので注意すること」と記載し、注意喚起する必要があると考える。
併せてMRによる薬剤情報提供に際し、「この注射の構造として、薬剤が飛び出すようなことは無く、針が引っ込み薬剤を患部に置いてくるような構造である」と説明しているようであるが、実際は「薬剤はプランジャー(押し子)に押される形で、直径1.5mm、長さ16mmの円柱状の固形物(形状はシャープペンシル様、硬度はロウソク様)が薬剤として押し出され患部に挿入される。
以下、文字数超過のため省略。
全文は「平成30年度 第2回医薬品安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例)」の別添1をご参照ください。 《http://www.pmda.go.jp/files/000226538.pdf》 |
事例検討結果 | ゾラデックス皮下注射後の腹腔内出血事例である。本剤投与後に発生しうる出血のリスクおよび、痩せ型の患者における使用方法について、情報提供を実施しているところである。 |