【記述項目】 |
《関連した薬剤》 |
一般名 |
乾燥BCG膀胱内用 (日本株)
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販売名 |
イムノブラダー膀注用80mg
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剤型 |
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規格単位(含有量、濃度) |
80mg
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製造販売業者名 |
日本ビーシージー製造株式会社
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事例の具体的な内容 |
イムノブラダー膀注用80mg+生理食塩液40mLを注入し、投与後1回目に150mLの排尿があった。膀胱内注入療法後は、第1回目の排尿を消毒薬にて消毒を行う必要があった。感染管理室と検討の上、使用する消毒薬を添付文書に示されている内容へ変更して初めての排尿消毒だった。外来患者で膀胱内注入療法終了後、排尿してもらった。消毒は泌尿器科外来診察処置室の汚物処理可能部屋で、換気扇を作動させ、当事者はマスク、ゴーグル、手袋を着用し実施した。治療薬込みの排尿150ccに同量の6%次亜塩素酸ソーダを混入したところ、液体が熱を帯び発泡し、塩素ガスが発生した。当事者はすぐに目に刺激を感じ、同時に同診察室にいた看護師2名、事務員2名、医師1名もそれぞれ眼、咽頭に刺激を感じ、眼の痛み、流涙、咽頭痛、頭痛等の症状が出現した。
当事者1は、咽頭症状で耳鼻科と眼症状(違和感・流涙)眼科1回の受診で終了。当事者2は、咽頭症状・頭痛で耳鼻科2回と眼症状(違和感)で眼科3回通院。当事者3は、咽頭症状で耳鼻科2回の受診。当事者4は、眼症状(違和感)で眼科2回通院。当事者4と5は、咽頭症状で耳鼻科1回受診で対応した。診察中の患者はいなかったため、患者への健康被害は無かった。
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事例が発生した背景・要因 |
患者はグラクティブ錠50mg1錠1日1回朝を内服中で、膀胱内注入療法中も他に静脈内投与等は行っていなかった。また、尿を入れた容器に他の薬剤や薬液等が混入した可能性はなかった。
膀胱内注入療法後、第1回目の排尿を消毒薬にて消毒を行うよう製薬会社作成の添付文書や患者用パンフレットに明記されていた。その方法を忠実に実施した結果、熱と白い泡の発生と共に塩素ガスが多量に発生した。診察室の換気扇は常時回っていたが、処置があるため、窓は閉まっていた状況である。製薬会社の患者用パンフレットには、「塩素ガスの泡が出ることがあります。窓を開ける、換気扇を回すなど十分に換気を行ってください」と記載してある。換気扇は回していたが、カップよりこぼれる程の泡が発生するとは思われない表現であり、実際には熱も帯びた状況であった。当事者の聞き取りでは、「まるで化学実験をしているかのように泡がボコボコと発生し熱も帯び、恐怖感があった」とのことであった。塩素ガス発生後直ちに窓を開け、換気を行ったが、診察室一帯で業務を行っていた当事者を含む職員6人に健康被害が発生した状況である。
事例発生後、院内において排尿した尿50mLに同量の6%次亜塩素酸ナトリウムを加える実験を屋外で試みたところ、肉眼的に濃縮尿と思われた尿(pH未測定)で、すぐに気泡が見られ発泡し、カップに触れると熱を持つ事象が見られた。肉眼的に濃縮尿ではない尿に同量の消毒液を入れたところ、気泡はあるが、泡立つこともなく、カップは熱くならなかった。
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実施した、若しくは考えられる改善策 |
日本ソーダ工業会作成の「安全な次亜塩素酸ソーダの取り扱い」書では、酸が添加され、pHが7以下になると急激に分解反応が生じ、塩素ガスが発生することや事故事例・ミスト吸収による人体に対する影響が掲載されている。事例発生後直ちに製薬会社へ報告したが、このような報告を受けたことが無いとのことであった。そのため当院において、尿(50mL)と同量の6%次亜塩素酸ソーダ混入実験を実施したところ、肉眼的に濃縮と思われる尿では今回の事例と同様に白い泡が尿カップからこぼれるまで膨れあがり、熱を帯びた。肉眼的に通常の淡黄色尿と思われる尿では、熱も帯びること無く気泡のみに止まった。今日まで後者の状況で問題が発生していないと推察されるが、当院と同様の問題発生が皆無ではないことが実験結果より明らかとなった。その後製薬会社より尿と同量の70%イソプロパノールを尿中に入れることの回答が得られたため、今後試行を行う予定である。しかしながら、患者や医療関係職員の安全確保と再発防止のため添付文書や患者用パンフレットへ掲載されている消毒方法の早急な見直しを製薬会社へ要望したい。
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