事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 メチルエルゴメトリンマレイン酸塩
販売名 メテルギン錠0.125mg
剤型
規格単位(含有量、濃度) 0.125mg
製造販売業者名 ノバルティスファーマ
《医薬品の取り違え事例の場合、本来投与すべき薬剤》
販売名 ウテメリン錠5mg
剤型
規格単位(含有量、濃度) 5mg
製造販売業者名 キッセイ薬品
事例の具体的な内容 産科外来にて羊水分析目的で羊水穿刺が実施され、フロモックス錠とウテメリン錠が処方された。院内の薬局で調剤した。交付時、薬剤師は患者氏名を患者と相互確認したのみで、薬袋の中身(メテルギン錠)を見せずにそのまま薬袋を交付した。患者は、帰宅後処方された薬と薬に添付されていた医薬品情報提供用紙の薬品の写真が違うことに疑問を抱き、薬局へ電話で問い合わせた。薬局で確認したところ、ウテメリン錠の処方に対してメテルギン錠が調剤されていたことがわかった。薬剤師は、患者を訪ね、謝罪するとともに正しく調剤された薬と交換した。(服用はなし)
事例が発生した背景・要因 ○薬剤師要因 ・調剤者は、処方せん内容確認が不十分な状態で調剤を行った。調剤マニュアルに定められている方法(調剤時に処方せん内容と調剤した薬剤を照合する)で調剤しなかった。 ・鑑査者は、本鑑査の前の監査内容(メテルギン)に引きずられて、処方せん内容(ウテメリン)をよく見ないで調剤されていた薬品(メテルギン)を見たため、処方せん内容と違うことに気付かなかった。 ・薬剤師の本調剤過誤によって引き起こされる影響の重大さの認識が甘かった。 ○薬剤要因 ・18年前に開催の薬事委員会において、産婦人科医師より「商品名が似ていることから処方ミスを起こしやすい」と報告があった。 ・ウテメリン錠との調剤間違いを防止するため、以前、メチルエルゴメトリン製剤をメテナリン錠からメテルギン錠に変えたが、どちらも5文字でそのうち3文字が同じことから間違えやすい。 ・当該事例の当事者は、調剤者(当時入職2年目)・鑑査者(当時入職10年目)ともに、切り替えの経緯などの詳細は把握していなかった。 ・薬品棚および処方せんのアラート情報が不足していた。 ・8年前に現行のオーダリングシステム(NEC)を導入して以降現在までに、本事例を除いて1件のヒヤリ・ハット事例(メテルギン錠を調剤すべきところにウテメリン錠を調剤)が報告されている(調剤室内で発見できたため外部への影響はなし)。 この際の調剤過誤対策として、ウテメリン錠については院内処方せんの出力名称を「(切迫流産)ウテメリン錠」と変更し、注意喚起を行っていた。 ○環境要因 ・鑑査者は、本来の鑑査者が至急対応するため代理として鑑査をしていた。また、電話対応など多重業務のなかで鑑査を行った。 ○その他 ・鑑査者が投薬を行ったが、その時、薬の効果などについて詳しい説明を行わなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ○調剤および監査業務対策 ・バーコードを用いた係数調剤支援システムを用いて調剤する。 ・処方せん出力名を変更し、調剤時および鑑査時に判断しやすくする。 ・過誤事例の情報共有を徹底させ、スタッフ全員の認識を高める。 ○薬剤に対する対策 ・採用薬品(メテルギンからパルタンMへ変更すみ)の変更を実施。ウテメリンと区別しやすくする。 ・薬品棚の表記を目立つものに変更し、薬効も表示する。 ○当該事例発生後、ウテメリン錠およびメテルギン錠が処方された患者については、薬剤とともに以下の文言が記載された患者向け説明書を添付することとし、また外来における薬剤交付時に実際に薬剤を患者に見せて相互確認することにした。 ・ウテメリン錠「子宮の収縮をおさえ、流産や早産を防ぐはたらきがあるお薬です。」 ・メテルギン錠「子宮の収縮を促したり、子宮出血の予防や治療に用います。」 ○当該事例発生半年後、院内で薬剤が交付された全外来患者を対象に、薬剤交付時における患者との相互確認(薬剤名、規格および数量)を行っている。

事例検討結果
事例検討結果 ウテメリンでなくメテルギンを投与してしまった事例である。当該事例については、既に22年10月8日付薬食安発1008第1-3号通知「産婦人科領域における医薬品の誤投与に係る医療安全対策について(メチルエルゴメトリンマレイン酸塩製剤及びリトドリン塩酸塩製剤)」により、PTPシートのデザインを、変更している。