事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 塩化カリウム
販売名 K.C.L 点滴液15%
剤型
規格単位(含有量、濃度) 15%
製造販売業者名 丸石
事例の具体的な内容 血清カリウムデータが2.9と低く、主治医から下記の指示があった。 CV内頸 側管1 KCL点滴液 15%(40mEq /20mL)生理食塩液(20mL) 1日3回 指示受けをするA看護師は指示内容がおかしいと思い、手術中の主治医のハンディホンに電話をかけた。手術室看護師がハンディホンを受け、手術室看護師に「指示どおりに投与していいか」医師に聞いてもらうように依頼した。手術看護師が主治医に「オーダーどおりに投与していいか」と尋ねると「いいです」と返答があり、その返事を手術室看護師から聞いたリーダー看護師は指示受けを行った。受持ち看護師がKCLの注射薬を準備する際、アンプルに添付してある『点滴でうすめて静注』という表記を見て、点滴に薄めなくてよいのかとリーダー看護師に相談をした。リーダー看護師は主治医に再度尋ねると受持ち看護師に返事をして手術中の主治医のハンディホンに電話をかけた。手術室看護師が取次ぎ、手術室看護師が主治医の耳元にハンディホンを当てて主治医が指示受け看護師の声を聞き、それに答える形で確認が行われた。 リーダー看護師が「オーダーどおりでいいですか」と尋ねると手術室看護師が主治医の返答を代弁し、「はい」と返答があった。リーダー看護師はそれでもKCLの静注なので、受け持ち看護師にゆっくりとモニターを見ながら施行するように伝えた。14時40分頃、受け持ち看護師はKCL20mL+生理食塩液20mLの静注をゆっくり開始した。14時42分モニターのSpO2低下でアラームが鳴った。その時はHRに変化はなかったがKCL20mL+生理食塩液20mLの残が6mLのところで中止した。リーダー看護師に報告した。リーダー看護師が訪室時には患者の自発呼吸は弱く、HR:20、14時43分心臓マッサージを開始し主治医に電話連絡した。14時45分、自発呼吸なし。代行医師が来棟し、心停止を確認、14時50分指示でアドレナリンシリンジ1アンプルを静注した。14時54分HR:72、意識レベル200、瞳孔は縮瞳していた。脳外科医師に相談、蘇生後脳症予防のために、ラジカット・グリセオールの投与を行った。心電図検査を行い、循環器内科医師に評価を依頼、心臓には特に問題はなかった。17時15分、妻と娘に対して消化器外科副部長から病状と共に本日起こったことについて説明が行われた。CT検査を予定した。
事例が発生した背景・要因 1.指示受け看護師は投与回数 1日3回 という指示に疑問を持った。 2.指示受け看護師は手術室看護師を介して 医師に「指示どおりに投与していいですか」と確認をした。 3.受持看護師はKCLアンプルに添付してある『点滴でうすめて静注』という表記を見て、点滴に薄めなくてよいのかとリーダー看護師に相談をした。 4.指示受け看護師は主治医に「オーダーどおりでいいですか」と再度確認した。 5.指示受け看護師は2回主治医に電話確認したが「何のどのような指示に関しての確認か」を言わないで確認をした。 6.主治医は患者がICU在室中にKCLをシリンジポンプで投与した経験があった。 7.主治医は病棟でKCLの補正のためにICU在室中に行ったKCLシリンジポンプ投与をしようと思った。 8.主治医はICUでの注射処方をコピーして病棟指示とした(ICUのみの約束処方)。 9.主治医は注射処方指示で投与ルートの指示入力はしたが、投与速度、投与方法の指示は指示していなかった。 10.主治医は2回の確認電話に対して何の指示のことか確認しないで返事をした。 11.主治医はKCLをポンプで投与すると思っていたので指示どおりで言いと返事をした。まさか静注するとは思っていなかった。 12.指示受け看護師は医師の指示どおりでいいと言う返事を聞き、KCL静注を受持看護師にゆっくり、モニターを見ながら行うように伝えた。 13.受持看護師はゆっくり静注を行ったがモニターアラームが鳴って残が6mLのところで中止した。 14.受持看護師は直ぐに指示受け看護師に報告した。 15. 指示受け看護師は直ぐに心マッサージを開始し、速やかに対応が行われた。 16. 直ちに主治医に連絡した。 17.代診医師が緊急処置を指示し、蘇生を行った。 18.指示受け看護師は同勤務の他看護師にはこの指示内容について相談等をしていなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 1.KCL製剤をアンプルからKCLキット製剤に変更する。 2.指示入力のルール(投与ルート、投与方法、投与速度)を広報。 3.指示確認の仕方(いつ、誰の、どのような内容の指示かを明確に伝える。復唱する。)を院内ニューズレターで広報、学習する。 4.病棟等で他者にも伝わるように口に出して疑問に思うことや発生したできごとなど情報交換、情報共有をする。 5.危険な薬剤についての知識を持つ。 5.KCLキット製剤導入時に説明会を開催する。 6.KCL使用について院内で投与方法等のルールを作成し、周知した。

事例検討結果
事例検討結果 カリウム製剤については、平成19年3月30日付医政総発第0330001号・医薬総発第0330001号連名通知「医薬品の安全使用のための業務手順書マニュアルについて」及び平成20年12月4日付医政発第1204001号・薬食安発第1204001号連名通知「医薬品の販売名の類似性による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)」の巻末資料により、特に安全管理が必要な医薬品(心停止等に注意が必要な医薬品)として医療機関に注意喚起しているところであり、製造販売業者においても誤使用防止のため情報提供を実施しているところ。 また、医薬品・医療用具等安全性情報No.202においてもカリウム製剤は、新規配属者を含め関係者への注意喚起の徹底が必要な医薬品として紹介されている。