【記述項目】 | |
《関連した薬剤》 | |
一般名 | グリセリン |
販売名 | ケンエーG浣腸液50% |
剤型 | 浣腸剤 |
規格単位(含有量、濃度) | 60mL |
製造販売業者名 | 健栄製薬株式会社 |
事例の具体的な内容 | 排便が2日間無かったため、患者の希望で予定指示の浣腸(ケンエーG浣腸液50%60mL)を実施した。患者に左下側臥位となるよう言ったが、希望にて右下側臥位にて実施(患者が自分で向きやすかった)。レクタルチューブにグリセリンを塗布し、先端から10cm の位置にストッパーを固定した。ストッパーの部分を持ち、肛門から真っ直ぐ挿入した。挿入時の抵抗などは無くスムーズに入った。浣腸液を注入しチューブを抜去した際に、チューブには血液の付着は認めなかった。
反応便は無く便意のみ。浣腸液流出と共にと下血(鮮血)があったため、主治医の診察を受けた。直腸診にて、直腸内には腫瘤は無く、肛門の0 時の位置に柔らかい内痔核があることを確認した。主治医は浣腸後の出血はチューブ先端でこすれて直腸粘膜から出血したものと考え、穿通しているとは考えていなかった。
その後、泥状便2回あったが出血は無く、腹痛、発熱はみられなかった。
5日後、退院前検査として、下血の精査(悪性腫瘍等の可能性)も含め、腹部CTを行ったところ、直腸の穿通(疑)が発見された。(読影:直腸壁は肥厚。直腸腫瘍の否定が必要。直腸周囲脂肪織は混濁しており、直腸の右側壁外にair を認める。直腸壁の破れあるいは穿通を疑い、広義の後腹膜に炎症が波及している可能性あり。) |
事例が発生した背景・要因 | ・ もともと、腸管の疾患の既往はなく下血や排便時の出血等は記録されていない。以前に5 回の浣腸を行っているが出血は認めなかった。
・施行時には痛みの訴えは無かったが、出血を確認した看護師が腹痛の有無を問うと、「痛かった」と答えた。
・院内看護手順では、患者の体位は「左側臥位とするが、無理な場合は右側臥位、仰臥位でも良い。」とされていた。
・挿入の角度、深さは手順通りに実施された。
・患者の年齢を考慮すると、腸管粘膜が弱かった可能性がある。
・浣腸の挿入角度、長さを手順通りに実施したつもりでも、腸管の位置のずれや、手元の角度のずれにより、直腸壁に当たる可能性があった。
・手技上に問題はなかったが、何らかの理由により浣腸チューブの先端が直腸壁に当たり、傷つけた。
・直腸損傷発見までに5日間を要しているが、主治医が、浣腸後の出血の報告を受けた時点で穿通を発見するには、直腸鏡・大腸ファイバー検査等を行う必要がある。CTでも、当事例では、穿通直後に撮像されるほどの所見は出なかったと考えられる。また、数日間、下血や腹痛、発熱は見られないことからも発見は困難だった。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 |
事例検討結果 | グリセリン浣腸による直腸穿孔については、「PMDA医療安全情報(No34)」で注意喚起しており、また、製造販売業者においても患者指導箋や添付文書等で注意喚起を実施しているところ。
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