事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 塩化カリウム
販売名 KCL注10mEqキット
剤型
規格単位(含有量、濃度) 1モル10mL1キット
製造販売業者名 テルモ
事例の具体的な内容 急性冠症候群に対してPCI施行後、出血性ショックとなりステントグラフト挿入術の追加手術を行い加療中。CHDF使用中で、6時間毎に血ガス測定実施し「K補正:3.5mEq以下でKCL10mLを10mL/H、3.0mEq以下でKCL20mLを10mL/H」の指示あり。この指示は、KCLを原液で投与する指示内容であった。医師は病棟の定数保管薬のKCLがプレフィルドシリンジ製剤であることを把握していたが、看護師が準備する方法(別シリンジに吸い上げる)までは把握していなかった。0時にK3.5のため、担当看護師とリーダー看護師は医師指示を二人で確認した。担当看護師が多忙のため、リーダー看護師は定数保管薬のKCLを取り出し、10mL注射器に吸い取り担当看護師へ「10mL/Hで投与してね」と伝え薬剤を渡した。担当看護師は、「KCL10mEq」に意識が向いており、焦った状態で静脈注射を行った。6時にK1.8のため、担当看護師とリーダー看護師は医師指示を二人で確認した。0時と同様、担当看護師が多忙のため、リーダー看護師は定数保管薬のKCLを取り出し、20mL注射器に吸い取り担当看護師へ「10mL/Hで投与してね」と伝え薬剤を渡した。担当看護師は、0時と同様「KCL10mEq」に意識が向いており、焦った状態で静脈注射を行った。投与後、心静止となり、3回胸骨圧迫行い、10秒ほどで心拍再開した。心静止の原因を医師・看護師で話し合ったところ、急速静脈注射が発覚した。
事例が発生した背景・要因 1.特定診療科でプレフィルドシリンジから注射器に吸い取り原液を使用する不適切な使用方法。2.(発生場所のICUでは)不適切な使用方法を常時行っていた環境(他病棟ではプレフィルドシリンジのKCLの薬液を注射器に吸い取っての使用はない)。3.担当看護師の6R確認時、「KCL10mEq」に意識が向いており、投与方法や流量指示の確認不足あり。4.担当看護師は、カリウム製剤投与は初めてであり、ワンショット厳禁は把握していたが焦りがあった。5.サポート看護師が薬剤の準備、担当看護師が投与するという、責任の分散。6.救急患者対応などでサポート体制の不備発生。7.二人連続双方向型ダブルチェックの不順守。8.定数保管薬の棚には「ワンショット厳禁」と明記されていたが、見逃した。
実施した、若しくは考えられる改善策 1.プレフィルドシリンジの適切な投与方法改善のため、臨時緊急医療安全会議を開催し、必ず希釈して使用するよう、正しい使用方法を「厳密なカリウム補正が必要な場合は、CVより生理食塩水50mLにKCL(10mEq/10mL)を混注し、輸液ポンプ使用し、60mL/H以下で投与する」ように決定し、院内全体へ周知を行った。2.ハイリスク薬の適切な二人連続双方向型ダブルチェックの遵守。3.看護師のサポート体制強化。4.定数保管薬の注意喚起強化。5.病棟責任薬剤師によるミニレクチャーの実施。

事例検討結果
事例検討結果 カリウム製剤については、平成19年3月30日付医政総発第0330001号・薬食総発第0330001号連名通知「医薬品の安全使用のための業務手順書マニュアルについて」及び平成20年12月4日付医政発第1204001号・薬食発第1204001号連名通知「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)」の巻末資料により、特に安全管理が必要な医薬品(心停止等に注意が必要な医薬品)として医療機関に注意喚起しているところであり、製造販売業者においても誤使用防止のため情報提供を実施しているところ。 また、医薬品・医療用具等安全性情報No.202においてもカリウム製剤は、新規配属者を含め関係者への注意喚起の徹底が必要な医薬品として紹介されている。