事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 インスリン ヒト(遺伝子組換え)注射液
販売名 ヒューマリンR
剤型
規格単位(含有量、濃度) 100単位1mLバイアル
製造販売業者名 日本イーライリリー株式会社
事例の具体的な内容 ビーフリード500mLにヒューマリンR3単位混注の点滴を60mL/Hで1日3本持続点滴していた。入院時より低血糖のエピソードなし。担当看護師は13時訪室すると、患者は低血糖症状あり反応が鈍かったたため血糖測定した。血糖値は20mg/dL以下であったため輸液変更し20%糖投与を繰り返し意識状態は改善、正常血糖に回復した。夜勤者(新人看護師)が前日の22時と6時に点滴を更新したが、点滴に混注したヒューマリンRが指示の3単位ではなく30単位であった事が判明した。ツベルクリン用注射器を使用して0.3mLを注入していた(3単位は0.03mL)。
事例が発生した背景・要因 ・混注時にインスリン専用注射器を使用しなかった。新人看護師は専用注射器があることは知っていたが触ったことはなかったのでツベルクリン用注射器をインスリン専用注射器と思い込んでいた。・インスリン専用注射器は「ロードーズ」「インシュレット」の2種類を採用している。「インシュレット」はツベルクリン用注射器と類似している。・2人でのダブルチェックをしなかった。当院では、インスリン製剤は2人で確認を行うルールとなっている。通常ペン型インスリンはおこなっている。ヒューマリンRがインスリンと認識しているが混注するとしか思わなかった。夜勤の他メンバーは、休憩や患者対応をしており近くにはいなかった。・入職半年後で、自分でできることはしなくてはという気持ちがあった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・インスリン専用注射器を1規格のみにする。ツベルクリン用注射器に類似しているインシュレットを廃止する。・インスリンバイアルとインスリン専用注射器を専用トレイに一緒に配置する。薬剤部よりバイアルに「専用注射器を使用」と添付し部署へ払い出す。保管している保冷庫に「インスリン準備時は、必ずインスリン専用注射器を使用しましょう」と表示する。・新採用者研修時には、実物を使ってシュミレーションを行う。・夜勤者間で新人看護師の業務の把握や指導について共有する。

事例検討結果
事例検討結果 インスリンバイアル製剤については、汎用注射器を用いて調製することで、誤った量を調製し、投与する事例が繰り返し報告されていること、また、平成30年12月28日付事務連絡「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(別添)」により、「インスリンについては、単位とmL の誤認により重大な有害事象に繋がる危険性が高いため、専用シリンジの管理、使用についても併せて周知されたい。」ことが求められており、再発防止の観点から、インスリンバイアル製剤を調製する際には、汎用注射器では無く、インスリン専用注射器を用いる注意喚起が必要であることから、令和2年5月19日付薬生安発0519第1号「「使用上の注意」の改訂について」により添付文書改訂を指示したところ。また、PMDA医療安全情報No.23(令和2年11月改訂)「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意について(インスリン注射器の使用徹底)」により、医療機関等に注意喚起等しているところである。