事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 インスリン ヒト(遺伝子組換え)注射液
販売名 ヒューマリンR注100単位/mL
剤型
規格単位(含有量、濃度) 100単位1mLバイアル
製造販売業者名 日本イーライリリー株式会社
事例の具体的な内容 患者は腰椎圧迫骨折で救急搬送され、採血データで低ナトリウム血症、高カリウム血症を認めた。上級医は研修医に、高カリウム血症に対してGI療法を行うため、40%ブドウ糖液40mLにヒューマリンR注5単位を混ぜ、ゆっくり静脈注射するよう指示した。研修医は、上級医より直接指示を受けたため、看護師に指示を確認せず、40%ブドウ糖液20mL2A、ヒューマリンR注5mLを混ぜ、ゆっくり静脈注射を開始した。研修医が5mLの注射器を持っていたことを不審に思った看護師は、ヒューマリンR注の量を研修医に確認したところ、5単位ではなく500単位で調製していたことに気付いた。約5mLを投与したところで中止し、40%ブドウ糖液2Aの投与、15分毎の血糖測定を行った。中心静脈カテーテルを挿入して10%ブドウ糖液を持続投与し、血糖値に応じて40%ブドウ糖液を投与した。
事例が発生した背景・要因 ・ インスリン専用注射器を使用せず、5mLの注射器でヒューマリンR注を吸い上げた。 ・ 研修医はインスリン専用注射器があることは知っていたが、1mLが1単位と誤解しており、5mLを吸い上げて40%ブドウ糖液と混ぜた。 ・ 40%ブドウ糖液40mLにヒューマリンR注を混ぜる時、上級医または看護師に確認しなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・ ヒューマリンR注のバイアルに、インスリン専用注射器を使用することの注意喚起タグをつける。 ・ 臨床研修医に対するインスリン療法の講義にGI療法の内容を追加する。 ・ 医療安全セミナーのインスリン投与に関する講義にGI療法の内容を追加して開催を予定する。

事例検討結果
事例検討結果 インスリンバイアル製剤については、汎用注射器を用いて調製することで、誤った量を調製し、投与する事例が繰り返し報告されていること、また、平成30年12月28日付事務連絡「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(別添)」により、「インスリンについては、単位とmL の誤認により重大な有害事象に繋がる危険性が高いため、専用シリンジの管理、使用についても併せて周知されたい。」ことが求められており、再発防止の観点から、インスリンバイアル製剤を調製する際には、汎用注射器では無く、インスリン専用注射器を用いる注意喚起が必要であることから、令和2年5月19日付薬生安発0519第1号「「使用上の注意」の改訂について」により添付文書改訂を指示したところ。また、PMDA医療安全情報No.23(令和2年11月改訂)「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意について(インスリン注射器の使用徹底)」により、医療機関等に注意喚起等しているところである。