事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 インスリン ヒト(遺伝子組換え)注射液
販売名 ノボリンR注100単位/mL
剤型
規格単位(含有量、濃度) 100単位1mLバイアル
製造販売業者名 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
事例の具体的な内容 インスリン持続投与は、生食100mLにノボリンR50単位を混注して持続投与を行う指示であった。担当看護師は薬剤を準備する際、インスリン専用シリンジではなく、通常のシリンジを用いてノボリンRのバイアルから5mL吸って混注して準備した。昼頃、準備したインスリンをシリンジポンプに追加した。午後になり患者の低血糖が持続しており医師に報告した。インスリン持続投与の流量を下げ、20%ブドウ糖を静脈注射し、輸液をブドウ糖入りのものに交換した。その後も患者の低血糖状態は持続していた。インスリンの投与量と患者の低血糖状態に疑問に感じた病棟薬剤師が、別の看護師に報告し、担当看護師に混注の手順を確認したところ、ノボリンRが10倍混注されていることが判明した。
事例が発生した背景・要因 ・病棟の特徴としてインスリンを使用する機会がなく、2年の看護師経験はあるが初めて取り扱う薬剤であった。インスリンが危険薬であること、インスリン専用シリンジを使用することを知らなった。・インスリンバイアルを見て100単位が10mLであると思い込み、通常のシリンジで5mL吸って準備した。・病棟ではインスリン使用時は2名でダブルチェックをするルールであったが、ダブルチェックを依頼した別の看護師も、インスリンの使用が初めてであり、50単位5mLと言われたが、誤りに気付くことができなかった。・さらに、インスリンを保管している冷蔵庫の扉には、インスリン専用シリンジを使用する注意喚起のポスターが掲示されているが、全く認識せず、通常のシリンジを使用していた。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・教育について更なる強化を図った。新人看護職員研修では4回のインスリン研修と各部署のインスリンに関する技術チェックを行ってきたが、1年目終了時の復習の機会とする教育を追加した。・各部署で実施する年2回の病棟薬剤師による危険薬の勉強会にて、基本となる教育内容でインスリンなどの重要な危険薬の教育を統一して実施することとした。・環境については、冷蔵庫に掲示したポスターを廃止し、インスリンバイアルはインスリン専用シリンジを使用することがわかるように容器にインスリンシリンジの写真を貼り、その容器に入れて院内全体で運用することとした。

事例検討結果
事例検討結果 インスリンバイアル製剤については、汎用注射器を用いて調製することで、誤った量を調製し、投与する事例が繰り返し報告されていること、また、平成30年12月28日付事務連絡「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(別添)」により、「インスリンについては、単位とmL の誤認により重大な有害事象に繋がる危険性が高いため、専用シリンジの管理、使用についても併せて周知されたい。」ことが求められており、再発防止の観点から、インスリンバイアル製剤を調製する際には、汎用注射器では無く、インスリン専用注射器を用いる注意喚起が必要であることから、令和2年5月19日付薬生安発0519第1号「「使用上の注意」の改訂について」により添付文書改訂を指示したところ。また、PMDA医療安全情報No.23(令和2年11月改訂)「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意について(インスリン注射器の使用徹底)」により、医療機関等に注意喚起等しているところである。