事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 インスリン ヒト(遺伝子組換え)注射液
販売名 ヒューマリンR注100単位/mL
剤型
規格単位(含有量、濃度) 100単位1mLバイアル
製造販売業者名 日本イーライリリー株式会社
事例の具体的な内容 糖尿病性ケトアシドーシスの治療のため医師はインスリン持続注射をオーダ。看護師3名が量が多い(生理食塩液90mL+ヒューマリンR注100単位/mL 1バイアル、total 100mLを5mL/hで投与)と疑問に思い、医師に確認するも指示通りの投与量で投与可能との回答。看護師2名で計算(規定濃度の0.1単位/kg/hのため体重50kgで計算すると5単位/50kg/h)を行ったが、単位をmLに換算しなかったため過量投与に気づけなかった。体重が43kgであったため指示が4mL/hへ変更されたが、規定濃度の10倍の濃度で投与を開始した。血糖値が70台となり、グルコース追加するも血糖値は上がらず、流量3mL/hへ減量。その後も血糖値60-70台が続くが過量投与に気付かず投与継続。15-20時間投与継続の後、診療看護師が規定濃度の10倍の濃度であることに気づいた。
事例が発生した背景・要因 ・年に1、2例あるか無いかの慣れない治療であり、十分に経験があるとは言えず、知識不足もあり、濃度の計算の際に単位/hからmL/hへの計算ができなかった。・3名の看護師で量が多いのではと医師に疑義照会するも医師自身の経験も少なかったが、医師が大丈夫との判断だったため大丈夫と思いこんだ。・低血糖が続いた時に過量投与を疑うべきであったが、看護師は過量投与に思考が至らなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・ヒューマリンの適切な投与量を知り、投与時は細かな流速変更、急速投与の防止のためシリンジポンプを使用する。・インスリン専用のシリンジを使用する意味を理解し、単位とmLの混同を防止する。・ヒューマリンの希釈の規定を統一する(院内ルールへ統一することを医師、看護師カンファレンスで決定)。ヒューマリンR0.5mL+生理食塩液50mL(1単位/mL)。・ハイリスク薬を使用する際はマニュアルを確認する。・疑問や不安がある時は薬剤部または急性期治療の経験豊富なPICU医師へ確認する。・軽度のDKAであっても頻回採血が必要なためPICU管理とする(PICU医師と相談の上、決定)。

事例検討結果
事例検討結果 インスリンバイアル製剤については、汎用注射器を用いて調製することで、誤った量を調製し、投与する事例が繰り返し報告されていること、また、平成30年12月28日付事務連絡「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(別添)」により、「インスリンについては、単位とmL の誤認により重大な有害事象に繋がる危険性が高いため、専用シリンジの管理、使用についても併せて周知されたい。」ことが求められており、再発防止の観点から、インスリンバイアル製剤を調製する際には、汎用注射器では無く、インスリン専用注射器を用いる注意喚起が必要であることから、令和2年5月19日付薬生安発0519第1号「「使用上の注意」の改訂について」により添付文書改訂を指示したところ。また、PMDA医療安全情報No.23(令和2年11月改訂)「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意について(インスリン注射器の使用徹底)」により、医療機関等に注意喚起等しているところである。