事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 ヒト インスリン(遺伝子組換え)
販売名 ノボリンR注 100単位/mL
剤型
規格単位(含有量、濃度) 100単位/mL
製造販売業者名 ノボ ノルディスク ファーマ
事例の具体的な内容 既往歴:十二指腸潰瘍、高血圧。食道がん手術のため入院。麻酔科医が術前評価を行い、ASA PS 3。カリウムが5.0-5.6mmol/Lと高値をであったため術中にGI療法を予定した。麻酔科医は手術当日に大塚糖液50% 20mL 2管とノボリンRインスリンバイアル5単位を処方し、麻酔導入後、患者のバイタルサインが不安定だったため手術室を離れず病棟看護師に薬剤を持ってくるように依頼した。病棟看護師は薬剤を持参し、手術室看護師が受け取り麻酔科医に手渡した。麻酔科医は大塚糖液50% 20mL 2管+ノボリンRインスリンバイアル5単位で作成するところ、手術室に専用シリンジがなかったため、ツベルクリン用シリンジを使用した。ツベルクリン用1mLシリンジを使用してノボリン50単位で作成し15mL/時間で投与した。2時間30分後、カリウム値の確認のため血液ガス検査をしたところ血糖が16mg/dLまで低下しており、ノボリンの注入量を10倍量投与したことに気づいた。大塚糖液50% 40mLを静注後、シリンジで持続投与し以降30分から1時間ごとに血糖測定し65-110mg/dLで推移した。麻酔導入後より血圧80mmHg前後で経過しておりノルアドレナリン0.3mg/時間を開始した。手術終了後、意思疎通を確認し抜管。予定通りICUに入室した。
事例が発生した背景・要因 ・手術室にはインスリンバイアルを常備していないため、手術室で必要な時はICUでインスリンの準備をしていた。・手術室にインスリン専用シリンジは常備しておらず、 ICUでは注射準備台にインスリン専用シリンジを常備している。・麻酔科医はインスリンは専用注射器で吸引することを知っていたが、 手術室に専用シリンジがなかったためツベルクリン用シリンジを使用した。また通常の注射器では0.05mLであることを認識しながら、誤って0.5mLを吸引した。・麻酔科医が薬剤を準備する場合、通常看護師とダブルチェックはしないため、インスリンを準備したとき、看護師とダブルチェックをしなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・インスリンはICUで準備することを徹底するよう診療科内で共有した。・必要時、手術室看護師とダブルチェックを実施する。

事例検討結果
事例検討結果 インスリンバイアル製剤については、汎用注射器を用いて調製することで、誤った量を調製し、投与する事例が繰り返し報告されていること、また、平成30年12月28日付事務連絡「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルの改訂について(別添)」により、「インスリンについては、単位とmL の誤認により重大な有害事象に繋がる危険性が高いため、専用シリンジの管理、使用についても併せて周知されたい。」ことが求められており、再発防止の観点から、インスリンバイアル製剤を調製する際には、汎用注射器では無く、インスリン専用注射器を用いる注意喚起が必要であることから、令和2年5月19日付薬生安発0519第1号「「使用上の注意」の改訂について」により添付文書改訂を指示したところ。また、PMDA医療安全情報No.23(令和2年11月改訂)「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意について(インスリン注射器の使用徹底)」により、医療機関等に注意喚起等しているところである。