事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 タクロリムス水和物
販売名 タクロリムスカプセル0.5mg「ニプロ」
剤型 カプセル
規格単位(含有量、濃度) 0.5mg
製造販売業者名 ニプロ株式会社
《医薬品の取り違え事例の場合、本来投与すべき薬剤》
販売名 グラセプター カプセル
剤型 カプセル
規格単位(含有量、濃度) 0.5mg
製造販売業者名 アステラス製薬株式会社
事例の具体的な内容 16年前に生体間腎移植を受けた患者。以降は本院門前の調剤薬局で薬を受け取っていたが、施設入居に伴い、前月20日の処方から調剤薬局が変更になった。その際、調剤薬局には後発品に切り替え可能であることが伝えられていた。今月○月20日、院外薬局において、グラセプターカプセル0.5mg(成分名:タクロリムス水和物徐放カプセル)1Capを調剤するはずが、誤ってタクロリムスカプセル0.5mg「ニプロ」1Capが91日分調剤された。○月26日、当該患者が入居している施設内で転倒したことから本院へ入院した。○月27日から、院内処方(グラセプターカプセル)に切り替えた。○月28日に本院薬剤部において持参薬を確認したところ、調剤過誤が発覚し、そのことを当該院外薬局へ連絡をした。その後、院外薬局から患者家族に連絡をして、経緯と内容を説明し、後日本院担当医師より、患者家族(患者の娘)へ過誤内容を説明した。翌△月8日、正しい内容の薬剤を調剤し直して、患者に渡した。
事例が発生した背景・要因 ・当該薬局では「処方入力(事務職員)」→「処方監査」→「調剤」→「一次監査」→「二次監査」を実施後に薬を投薬しているが、入力の際に患者が後発医薬品への代替えを希望していたことから、グラセプターカプセルをタクロリムスカプセルで入力し、処方監査を行った際にもその変更が不可であることに気づかず、疑似照会せずにタクロリムスカプセルで調剤し、その後の一次監査及び二次監査でも気づかずに投薬してしまった。※通常、当該薬局のレセコン上は代替え不可の薬剤は選択できない設定になっているため、入力時に別の薬剤を入力した形になった(今回はグラセプターカプセルと入力したが、それを消去して、タクロリムスカプセル0.5mg「ニプロ」と入力した)。・処方入力時に、薬剤師(AもしくはB)に対し、グラセプターカプセルが在庫なしと表示されるため、他の薬剤に変更するべきか確認をしているが、「グラセプターカプセル在庫なし」、「タクロリムスカプセル在庫あり」という背景であることから、薬剤師は在庫があるタクロリムスカプセルに変更する旨指示をしている。・入力者から薬剤師に変更の可否を確認する際に、グラセプターカプセルで入力した場合は代替えでの処方ができないことから、再度確認する必要あったが、それを行っていなかったこと。・薬剤師はグラセプターの成分がタクロリムスという事は知っていた。しかし、異なる薬物動態であるという知識がなかったこと。・薬剤師はスマートフォンのアプリでグラセプターカプセルの後発品を検索し、タクロリムスカプセルを選択した。そのアプリは同成分を表示させるが、薬物動態の違いまでは加味していない。後発品が存在しない先発品でも、同成分であれば別の薬剤の後発品も表示されるため、誤認して後発品があると思い込み、間違えにつながったこと。・薬剤師は、変更確認等の質問に対しては。保険薬事典を確認のうえ回答すべきところを、確認をせずに回答したこと。・入力者はグラセプターカプセルをタクロリムスカプセルに変更して入力する際に、レセコン上は別な薬剤として出てくるため、「疑義照会が必要」という押印をするというルールになっているが、そのことが徹底されていなかったこと。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・グラセプターカプセルには「変更不可」のコードを設定する。・変更確認時は必ず保険薬事典を確認する。・入力者から担当薬剤師に確認の際にグラセプターカプセルを代替えして入力する場合は「当該薬剤なし」と表示されるので、薬剤師からの指示があった場合でも変更はしない。・今回は思い込みが原因でルールを逸脱した形で調剤されているため、再度ルールの徹底をした処方入力から調剤までの流れを、当該薬局の全職員で統一する。・入力時に代替えではなく処方変更にあたる場合、どのような場合でも「疑義照会が必要」の押印をしてから処方監査へ移行する。・会員薬局に今回の注意喚起の書面送付を依頼中。・スマートフォンアプリの特性を理解する。

事例検討結果
事例検討結果 グラセプターとプログラフは一般名が同一であることによる薬剤取違え事例等が複数報告されていることから、製造販売業者は製剤的特徴が異なること等について医療機関へ注意喚起を実施しているところである。