【記述項目】 |
《関連した薬剤》 |
一般名 |
インスリン ヒト(遺伝子組換え)
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販売名 |
ヒューマリンR注100単位/mL
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剤型 |
注
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規格単位(含有量、濃度) |
100単位/mL
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製造販売業者名 |
日本イーライリリー株式会社
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事例の具体的な内容 |
・入院時の心電図検査にてテント状T波を認め、緊急の血液検査を行った結果、血清カリウム値が6.6mEq/Lと高値であった。・医師はGI療法(50%ブドウ糖液20mL 1AとヒューマリンR注10単位 1時間静注)の指示を出した。・看護師はヒューマリンR注0.1mL(10単位)のところ、誤って100倍量の10mL(1000単位)を秤量した。・2年目の看護師同士でダブルチェックを行ったが問題に気付かず、投与が開始された。・開始1時間後には、血糖が148mg/dLから58mg/dLまで低下した。・低血糖は翌朝まで遷延したが、血糖値に応じたブドウ糖の補充により意識障害なく軽快した。
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事例が発生した背景・要因 |
・調整した看護師は、過去にヒューマリンRを専用シリンジで皮下注射した経験があり、皮下注射では専用シリンジを使うことを理解していた。・調製した看護師は、GI療法の経験がなく、インスリンの点滴投与だから大量(mL単位)で使用するものだと思い込んでおり、GI療法のインスリン調製においても、専用シリンジを使用することを知らなかった。・調整した看護師は、ヒューマリンR注1Vは1000単位であることは理解していたが、調製時には「mL」と「単位」の違いに認識が及ばず、「mL」と思い込んでしまっていた。・GI療法は重症病棟でよく行われるが、一般病棟ではほとんど実施されていない。・ダブルチェックの相手は同じ2年目の看護師で、GI療法を1度だけ経験していたが、十分な知識がなかった。・本来ダブルチェックは以下のいずれかの方法で行う。1)2人同時双方向型:Aがリストを読み上げてBが対象物の内容を確認し、次に、Bが対象物の内容を読み上げてAがリストを確認する。2)2人連続型:2人が連続して同じ方法で1回ずつチェックする。3)2人連続双方向型:A がチェックした後に B が逆方向でチェックする。・当該事例では、調整した看護師が「ヒューマリンR10なので10mLです」と読み上げ、ダブルチェックの相手は10単位と認識して十分な確認をせず承認し、正しいダブルチェックの方法で行われていなかった。・薬剤投与前の6R(6つのRight)を十分に確認していなかった。・夜勤者が投与状況の確認を行っているが、本来20mLシリンジのところ50mLシリンジがセットされていることに疑問を感じなかった。・時間外オーダのため薬剤師による混合調製が行われなかった。・症状発現を機に緊急の検査オーダしたため、指示の締め切り時間15:30に間に合わず、調製が看護師の忙しい時間帯に重なってしまった。
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実施した、若しくは考えられる改善策 |
・ヒューマリンRをインスリン注射器以外で秤量しないように、ヒューマリンRおよびインスリン注射器の在庫場所にリマインダーを設置して注意喚起する。1)ヒューマリンRの設置場所:保冷庫内、また、保冷庫の扉にヒューマリンRは必ず専用注射器を使用する旨のリマインダーを貼付した。2)インスリン注射の設置場所:インスリン関連の医療器具は、点滴作成台下最上段の引き出しにまとめて在庫しており、リマインダーを追加設置して注意喚起している。・院内の医療安全情報を発行し、院内全体に注意喚起する。・院内の医療安全情報には、インスリン製剤の単位とmLの換算表、専用注射器の説明、ダブルチェックの方法について掲載している。・部署および院内でインスリンの危険性に関する研修を実施する。・正しいダブルチェックの方法を動画教材にするなど、確認行為の充実を図る。・低リスクで高K血症を治療できる「ロケルマ懸濁用散」の採用申請を検討する。
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