事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 グリセリン
販売名 グリセリン浣腸液60mL
剤型
規格単位(含有量、濃度) 60mL
製造販売業者名 不明
事例の具体的な内容 患者は便秘のため浣腸を希望した。看護師は患者に側臥位での実施を勧めたが、浣腸液がすぐ出るのでトイレで実施して欲しいと希望された。トイレへ移動し、グリセリン浣腸液60mLの先にワセリンを塗布し、ストッパーを5cmの位置に固定して、立位(肛門を突き出す姿勢)で挿入した。抵抗なく挿入でき、浣腸液を約50mL注入して便座に移動した。チューブの先に便の付着があったが、出血や注入時の痛みの訴えもなかった。10分後、トイレからコールがあった。患者は排便困難を訴え、肛門周囲に3cm幅の腫脹と少量の出血を認めた。消化器外科医師が診察し、直腸診で硬便が多量に確認され摘便した。腹部単純X-Pでは直腸穿通の所見はなく、結腸に多量の便貯留が確認された。その後、陰嚢の腫脹が出現し、CT検査で直腸右壁から腸管の外にエアーが確認され、直腸穿通と診断された。病態が悪化した場合、直腸、肛門周囲膿瘍やフルニエ壊疽にまで進展し全身状態が悪化することも危惧され、翌日、腹腔鏡下にストマ造設術を施行した。手術中、経肛門的に摘便と腸洗浄を行い、残便を排除した。腹腔鏡下に腹腔内から直腸とその周囲を観察したが、腸管損傷や便汚染の所見は認めなかった。
事例が発生した背景・要因 患者は慢性の便秘症で直腸に硬便が多量に貯留しており、肛門周囲がうっ血状態になっていた。硬便が多量に貯留している状態で浣腸を実施することは、それ自体が直腸壁を穿通するリスクがあった。明確な穿通の確認はできていないが、経過や画像所見から浣腸と穿通との因果関係はほぼ確実であり、浣腸は危険とされている立位で実施された。当事者は、2012年に配信されたPMDA医療安全情報を見ていなかった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・PMDA医療安全情報を再配信し、立位での浣腸実施の危険性を周知した。 ・排便コントロールの方法、下剤の選択方法をルーチン化する。 ・浣腸実施時の注意点をまとめ、看護手順を改訂する。 ・排便コントロール、浣腸、摘便の安全な実施方法を多職種で検討する。

事例検討結果
事例検討結果 グリセリン浣腸による直腸穿孔については、「PMDA医療安全情報(No34)」で注意喚起しており、また、製造販売業者においても患者指導箋や添付文書等で注意喚起を実施しているところ。