事例報告内容
【記述項目】
《関連した薬剤》
一般名 ドセタキセル水和物
販売名 タキソテール点滴静注用80mg/タキソテール点滴静注用20mg
剤型
規格単位(含有量、濃度) 80mg/20mg
製造販売業者名 サノフィ・アベンティス株式会社
《医薬品の取り違え事例の場合、本来投与すべき薬剤》
販売名 タキソール注射液30mg/タキソール注射液100mg
剤型
規格単位(含有量、濃度) 30mg/100mg
製造販売業者名 ブリストル・マイヤーズ株式会社
事例の具体的な内容 患者はパクリタキセルの3回目投与目的で外来点滴室に来院(過去2回は病棟での投与)した。担当医師が化学療法剤投与予定表に本来投与予定のパクリタキセル112mgと記載したが、タキソテールと既存印刷された専用の注射指示票を使用し指示を出した。その後、化学療法剤投与予定表と注射指示票2つの伝票を薬剤部外来ミキシングルームへFAXにて送信した。送信された投与予定表と登録レジメン(weekly パクリタキセル)との照合の後、薬剤師による鑑査、薬品取り揃えが行われた。このとき化学療法剤投与予定表と注射指示票を確認せず注射伝票のみで確認したため、誤って記載されたタキソテール112mgを混合調製し外来化学療法室に払い出した。点滴ラベルは前歴データから打ち出されたためパクリタキセルが表示された。外来化学療法室で処方医師と看護師が点滴ラベルと注射指示票および調整後の空容器との照合を行ったがラベルの薬品名が違うにもかかわらず、間違いに気付かず投与した。外来化学療法室では、これまでも、実施時には、注射伝票との確認はしていたが、化学療法剤投与予定表と注射伝票との照合はしていなかった。
事例が発生した背景・要因 「ドセタキセル」については、タキソテールの商品名で指示をすることになっているが、「パクリタキセル」はそのまま成分名で表記するルールであるため、実施する人の頭の中で名前を変換する作業が生じ、混乱する可能性がある。 当院では、タキソテールがまず使用認可され、その後タキソール「パクリタキセル」が導入された。間違い防止のため後から認可されたタキソールは「パクリタキセル」の名称を使用するルールになっていた。照合や確認する機会が複数回あるため、確認者それぞれの責任の認識が薄くなり、かえって照合や確認がおろそかになっていた。外来化学療法室での照合に投与予定表が使用されていなかった。当院外来には、薬剤ごとに一般的なプロトコールを既存印刷した注射伝票が10種類程度あり、医師はそれを用いて処方している。一連のクールの投与予定表が入院、外来で分かれてしまうため治療法の認識が薄くなってしまう。抗癌剤への確認の重要性、リスク意識が低い。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・「タキソテール」は、「パクリタキセル」と同様に成分名で「ドセタキセル」とすることに表記のルールを変更する。 ・外来での化学療法点滴時にも、予定表との照合できるように薬剤部がコピーして、ミキシングした点滴と一緒に搬送する。 ・照合する機会が複数回あるが全て通り抜けている。照合するポイントを明確にし徹底する。 ・初回鑑査時にレジメン、投与予定表、注射指示票の照合確認を、最終鑑査時にレジメン、投与予定表、注射指示票、薬剤本体との照合確認を徹底する。 ・投与予定表との照合を外来、入院を通してシステム的に連動して行う。 ・抗癌剤の危険性を再認識してもらうため、部署内の勉強会等で周知の徹底を行う。

事例検討結果
事例検討結果 タキソテールとタキソールの名称類似性については、平成15年11月27日付医政発第1127004号・薬食発第1127001号連名通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」及び平成20年12月4日付医政発第1204001号・薬食発第1204001号連名通知「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)」により、医療機関に注意喚起しているところであり、製造販売業者においても誤用防止のために製品に関する情報提供及び表示の変更等を実施しているところである。 しかしながら、過去より死亡を含む同様事例が繰り返し報告されており、また、平成14年8月29日付医薬発第0829006号「医療安全推進総合対策への取り組みの推進について」においても企業は、患者の安全を最優先に考えた医療安全を確保するための積極的な取り組みが求められており、今般、再発防止の観点から名称の変更が必要であると考える。