ゴービック水性懸濁注シリンジ

作成又は改訂年月

**2024年 2月改訂 ( 第3版 )
2023年 11月改訂 ( 第2版 )

日本標準商品分類番号

876361

薬効分類名

ワクチン・トキソイド混合製剤

承認等

ゴービック水性懸濁注シリンジ

販売名コード

YJコード

636140FG1020

販売名英語表記

GOBIK Aqueous Suspension Syringes

承認番号等

承認番号

30500AMX00111000

販売開始年月

2024年 3月

貯法・有効期間

貯法

凍結を避け、10℃以下で保存

有効期間

製造日から18か月

基準名

生物学的製剤基準

沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン

規制区分

一般的名称

沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン

2. 接種不適当者(予防接種を受けることが適当でない者)

  1. 2.1 明らかな発熱を呈している者
  2. 2.2 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
  3. 2.3 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
  4. 2.4 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

3. 製法の概要及び組成・性状

3.1 製法の概要

百日せき菌Ⅰ相菌(東浜株)の培養ろ液を精製後、ホルマリンで減毒した感染防御抗原を含む液と、ジフテリア菌(Park-Williams No.8株)及び破傷風菌(Harvard株)の培養ろ液中の毒素をそれぞれ精製後、ホルマリンで無毒化したトキソイド液、及びVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)で増殖させた弱毒ポリオウイルス(セービン株)を精製後、ホルマリンで不活化したウイルス液について、それぞれ免疫原性を高めるためにアルミニウム塩に吸着させる。また、インフルエンザ菌b型(PBCC 197株)の培養液から抽出精製した莢膜多糖体であるポリリボシルリビトールリン酸(PRP)から生産したオリゴ糖類に、ジフテリア菌の変異株(Corynebacterium diphtheriaeC7(β197)/pPX3520)より産生させ、回収・精製した無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)を結合させる。本剤は、これらを規定濃度に調製し、混合した不溶性の液剤である。
なお、本剤は製造工程でウシの乳由来成分(カザミノ酸、スキムミルク、ペプトン、ラクトアルブミン加水分解物)、心臓由来成分(ビーフハートインフュージョン)、肝臓、肉、肉由来成分(牛肉消化液)、血液、血液由来成分(血清)、ブタの膵臓由来成分(パンクレアチン)、血液由来成分(ヘミン)、ブタ由来成分(トリプシン、パンクレアチン)及びウマ由来成分(血清)を使用している。

3.2 組成

本剤は、0.5mL中に次の成分を含有する。

ゴービック水性懸濁注シリンジ

有効成分百日せき菌の防御抗原  4単位以上
**ジフテリアトキソイド  10Lf
**破傷風トキソイド  0.6Lf
不活化ポリオウイルス1型(Sabin株)  1.5DU
不活化ポリオウイルス2型(Sabin株)  50DU
不活化ポリオウイルス3型(Sabin株)  50DU
インフルエンザ菌b型オリゴ糖-CRM197結合体  オリゴ糖の量として10μg
添加剤リン酸水素ナトリウム水和物  0.90mg以下
リン酸二水素ナトリウム水和物  0.52mg以下
塩化ナトリウム  3.83mg以下
塩酸  適量
水酸化ナトリウム  適量
塩化アルミニウム(Ⅲ)水和物(アルミニウム換算)  0.08mg
水酸化アルミニウムゲル(アルミニウム換算)  0.02mg
ホルマリン(ホルムアルデヒド換算)  0.02mg
エデト酸ナトリウム水和物  0.0175mg
M199培地  0.5mg

**Lf:Limit of flocculation(試験管内沈降法により測定したトキソイド量の単位)
DU:D抗原単位

3.3 製剤の性状

ゴービック水性懸濁注シリンジ

性状不溶性で、振り混ぜるとき均等に白濁する液剤
pH5.8~7.4
浸透圧比1.0±0.3(生理食塩液に対する比)

4. 効能又は効果

百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 本剤では、b型以外のインフルエンザ菌による感染症あるいは他の起炎菌による髄膜炎を予防することはできない。
  2. 5.2 本剤は、インフルエンザ菌b型による感染症、特に侵襲性の感染症(髄膜炎、敗血症、蜂巣炎、関節炎、喉頭蓋炎、肺炎及び骨髄炎など)に対する予防効果が期待できる。

6. 用法及び用量

初回免疫:小児に通常、1回0.5mLずつを3回、いずれも20日以上の間隔をおいて皮下又は筋肉内に接種する。
追加免疫:小児に通常、初回免疫後6か月以上の間隔をおいて、0.5mLを1回皮下又は筋肉内に接種する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 接種対象者・接種時期

    **本剤の接種は、生後2か月から90か月までの間にある者に行うが、初回免疫については、標準として生後2か月から7か月未満で開始し20~56日の間隔をおいて接種する。追加免疫については、標準として初回免疫終了後6か月から18か月を経過した者に接種する。

  2. 7.2 同時接種

    医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 本剤は、「予防接種実施規則」及び「定期接種実施要領」に準拠して使用すること。
  2. 8.2 被接種者について、接種前に必ず問診、検温及び診察(視診、聴診等)によって健康状態を調べること。
  3. 8.3 被接種者又はその保護者に、接種当日は過激な運動は避け、接種部位を清潔に保ち、また、接種後の健康監視に留意し、局所の異常反応や体調の変化、さらに高熱、けいれん等の異常な症状を呈した場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。

9. 特定の背景を有する者に関する注意

9.1 接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)

被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。

  1. 9.1.1 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者

    ,

  2. 9.1.2 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
  3. 9.1.3 過去にけいれんの既往のある者
  4. 9.1.4 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
  5. 9.1.5 本剤の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者

    <筋肉内接種>

  1. 9.1.6 抗凝固療法を受けている者、血小板減少症又は凝固障害を有する者

    本剤接種後に出血又は挫傷があらわれることがある。

9.2 腎機能障害を有する者

接種要注意者である。

9.3 肝機能障害を有する者

接種要注意者である。

11. 副反応

次の副反応があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副反応

  1. 11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)

    蕁麻疹、呼吸困難、血管性浮腫等があらわれることがある。

  2. 11.1.2 血小板減少性紫斑病(頻度不明)

    接種後数日から3週ごろに紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等があらわれることがある。本症が疑われる場合には、血液検査等を実施し、適切な処置を行うこと。

  3. 11.1.3 脳症(頻度不明)

    発熱、四肢麻痺、けいれん、意識障害等の症状があらわれることがある。本症が疑われる場合には、MRI等で診断し、適切な処置を行うこと。

  4. 11.1.4 けいれん(熱性けいれんを含む)(頻度不明)

    接種直後から数日ごろまでにあらわれることがある。

11.2 その他の副反応

30%以上

10~30%未満

10%未満

頻度不明

局所症状(注射部位)

紅斑(72.9%)、硬結

腫脹、疼痛

血腫、熱感、湿疹、発疹、そう痒感

呼吸器

上咽頭炎、上気道の炎症

咳嗽、鼻漏、鼻閉

消化器

食欲減退

下痢、嘔吐、便秘

皮膚

蕁麻疹

発疹、湿疹、紅斑

その他

発熱(60.8%)

過眠症、気分変化、泣き、不眠症

倦怠感、眼そう痒症、脱水、鼻咽頭炎

14. 適用上の注意

14.1 薬剤接種時の注意

  1. 14.1.1 接種時
    1. (1) 【ゴービック水性懸濁注シリンジの使用方法】に従い接種準備を行うこと。
    2. (2) 注射針は、ガンマ線等により滅菌されたディスポーザブル品を用いること。
    3. (3) 冷蔵庫から取り出し室温になってから、シリンジ(注射器)内の液剤を泡立てないように反転し、均等にして使用すること。
    4. (4) 本剤を他のワクチンと混合して接種しないこと。
    5. (5) 本剤は添加剤として保存剤を含有していないので、チップキャップを取り外した後は速やかに使用すること。
    6. (6) 本剤の使用に際しては、雑菌が迷入しないよう注意すること。また、他の容器に移し使用しないこと。
    7. (7) 注射針の先端が血管内に入っていないことを確かめること。
    8. (8) 本剤は、1回限りの使用とすること。
  2. 14.1.2 接種部位


    <接種経路共通>

    1. (1) 接種部位をアルコールで消毒する。なお、同一接種部位に反復して接種しないこと。
       <皮下接種>
    2. (2) 接種部位は通常、上腕伸側とする。
      <筋肉内接種> 
    3. (3) 接種部位は通常、1歳未満の者には大腿前外側部、1歳以上の者には大腿前外側部または三角筋中央部に接種することとし、臀部には接種しないこと。
    4. (4) 組織・神経等への影響を避けるため下記の点に注意すること。
      ・針長は筋肉内接種に足る長さで、神経、血管、骨等の筋肉下組織に到達しないよう、各被接種者に対して適切な針長を決定すること。
      ・神経走行部位を避けること。
      ・注射針を刺入したとき、激痛の訴えや血液の逆流がみられた場合は直ちに針を抜き、部位を変えて注射すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

類薬(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン)において、因果関係は明確ではないが、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎が国内で報告されている。また、類薬(インフルエンザ菌b型オリゴ糖-CRM197結合体ワクチン)において、因果関係は明確ではないが、ギラン・バレー症候群の海外報告がある。なお、本剤の臨床試験における報告はない。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国内第Ⅲ相試験(皮下接種)1)

    生後2か月以上43か月未満の健康乳幼児267例(本剤群133例、対照群134例)を対象に、評価者盲検試験を実施した。本剤群は本剤0.5mLを計4回(初回免疫として3~8週の間隔で3回、初回免疫終了後6~13か月の間に追加免疫として1回)、皮下に接種した。対照群は沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン及び乾燥ヘモフィルスb型ワクチン(破傷風トキソイド結合体)をそれぞれ0.5mL、計4回(初回免疫として3~8週間の間隔で3回、初回免疫終了後6~13か月の間に追加免疫として1回)、皮下に接種した。初回免疫後及び追加免疫後における本剤群及び対照群のHib1)  (PRP)、百日せき(PT、FHA)、ジフテリア毒素、破傷風毒素及び弱毒ポリオウイルス(セービン株:1型、2型、3型)に対する抗体保有率及び幾何平均抗体価は表のとおりであった。
    主要評価項目である初回免疫後の1µg/mL以上のHib(PRP)に対する抗体保有率、百日せき(PT、FHA)、ジフテリア毒素、破傷風毒素及び弱毒ポリオウイルス(セービン株:1型、2型、3型)に対する抗体保有率において、いずれも事前に規定された非劣性の成功基準2)  が達成され、本剤群の対照群に対する非劣性が検証された。
    なお、抗体保有率とは以下の抗体陽性基準値以上に達した被験者の割合のことである。
    Hib(PRP):≧1µg/mL2) ,3)   
    百日せき(PT):≧10.0 EU/mL4)    
    百日せき(FHA):≧10.0 EU/mL4)    
    ジフテリア毒素:≧0.1 IU/mL5)
    破傷風毒素:≧0.01 IU/mL6)   
    弱毒ポリオウイルス(セービン株)1型:≧8倍7)   
    弱毒ポリオウイルス(セービン株)2型:≧8倍7)   
    弱毒ポリオウイルス(セービン株)3型:≧8倍7)

    1) Hib:インフルエンザ菌b型
    2) 非劣性の成功基準:抗体保有率群間差の95%CIの下限値が-10%を上回る。なお、抗体保有率が本剤群と対照群のいずれも100%であった場合、95%CIは算出せず、非劣性が示されたと判断する。
    4)

    初回免疫後

     n

    幾何平均抗体価

    抗体保有率%(95%CI)

     本剤群

    対照群

    本剤群

    対照群

    本剤群

    対照群

    群間差

     Hib(PRP)

     133

    133

     23.7µg/mL

    6.7µg/mL

    100.0
    (97.3,100.0)

    88.7
    (82.1, 93.5)

     11.3
    (4.1, 18.5)

    百日せき(PT)

    133

    133

     155.30
    EU/mL

     200.24EU/mL

     100.0
    (97.3,100.0)

    100.0
    (97.3,100.0)

    0.0
    (-)

     百日せき(FHA)

     133

     133

     56.48EU/mL

     85.24EU/mL

    100.0
    (97.3,100.0)

    100.0
    (97.3,100.0)

    0.0
    (-)

    ジフテリア毒素

     133

     133

    1.84IU/mL

    1.28IU/mL


    99.2
    (95.9,100.0)

    98.5
    (94.7, 99.8)

    0.8
    (-4.7, 6.2)

    破傷風毒素

     133

     133

    0.473IU/mL

     0.158IU/mL

    100.0
    (97.3,100.0)

    99.2
    (95.9, 100.0)

     0.8
    (-4.5, 6.0)

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):1型

     131

     132

     685.0倍

     664.0倍


    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

     0.0
    (-)

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):2型

     131

     132

     2026.4倍

     1768.0倍

    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

     0.0
    (-)

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):3型

     131

     132

     1729.0倍

     2075.1倍

     100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

     0.0
    (-)

    追加免疫後

    n

    幾何平均抗体価

    抗体保有率%(95%CI)

    本剤群

    対照群

    本剤群

    対照群

    本剤群

    対照群

     Hib(PRP)

    132

    132

     56.5µg/mL

    34.2µg/mL

    100.0
    (97.2,100.0)

    98.5
    (94.6, 99.8)

    百日せき(PT)

    132

    132

    209.05EU/mL

    279.62EU/mL

    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

    百日せき(FHA)

    132

    132

    144.73EU/mL

    221.34EU/mL

    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

    ジフテリア毒素

    132

    132

    9.77IU/mL

    8.96IU/mL

    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

    破傷風毒素

    131

    132

    1.904IU/mL

    0.598IU/mL

    100.0
    (97.2,100.0)

    99.2
    (95.9, 100.0)

     弱毒ポリオウイルス(セービン株):1型

    131

    132

    2524.1倍

    2662.9倍

    100.0
    (97.2,100.0)

     100.0
    (97.2,100.0)

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):2型

     131

    132

    8821.9倍

     7512.1倍

    100.0
    (97.2,100.0)

     100.0
    (97.2,100.0)

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):3型

     131

    132

    6439.2倍

     7356.0倍

    100.0
    (97.2,100.0)

    100.0
    (97.2,100.0)

    本剤の副反応は91.7%(122例)に認められた。そのうち、接種部位の主な副反応として、紅斑が78.9%(105例)、硬結が46.6%(62例)、腫脹が30.1%(40例)、疼痛が13.5%(18例)に認められた。全身性の主な副反応は発熱(37.5℃以上)が57.9%(77例)、ワクチン接種後の易刺激性が27.1%(36例)、過眠症が24.1%(32例)、泣きが23.3%(31例)、不眠症が13.5%(18例)、食欲減退が13.5%(18例)に認められた。接種回数別の発現割合は以下のとおりであった。

    接種回数別の発現割合[%](発現例数)

     1回目
    (n=133)

     2回目
    (n=133)

     3回目
    (n=133)

     4回目
    (n=132)

     注射部位紅斑

     33.1(44)

     51.9(69)

     53.4(71)

     51.5(68)

     注射部位硬結

     11.3(15)

     27.1(36)

     23.3(31)

     26.5(35)

     注射部位腫脹

     5.3(7)

     16.5(22)

     6.0(8)

     12.9(17)

    注射部位疼痛

     5.3(7)

     6.8(9)

     3.8(5)

     6.8(9)

    発熱

     25.6(34)

     39.1(52)

     29.3(39)

     22.7(30)

    ワクチン接種後の易刺激性

     6.8(9)

     18.8(25)

     8.3(11)

     7.6(10)

    過眠症

     10.5(14)

     13.5(18)

     6.0(8)

     6.1(8)

    泣き

     8.3(11)

     14.3(19)

     7.5(10)

     5.3(7)

    不眠症

     6.8(9)

     6.8(9)

     3.8(5)

     1.5(2)

    食欲減退

     7.5(10)

     7.5(10)

     0.8(1)

     3.8(5)

  2. 17.1.2 国内第Ⅲ相試験(筋肉内接種)8)

    生後2か月以上43か月未満の健康乳幼児33例を対象に、本剤0.5mLを計4回(初回免疫として3~8週の間隔で3回、初回免疫終了後6~13か月の間に追加免疫として1回)、筋肉内に接種した。初回免疫後及び追加免疫後におけるHib(PRP)、百日せき(PT、FHA)、ジフテリア毒素、破傷風毒素及び弱毒ポリオウイルス(セービン株:1型、2型、3型)に対する抗体保有率及び幾何平均抗体価は以下のとおりであった。

    初回免疫後

    追加免疫後

    n

    抗体保有率%(95%CI)

    幾何平均抗体価

    n

    抗体保有率%(95%CI)

    幾何平均抗体価

    Hib(PRP)

     33

     97.0 
    (84.2,99.9)

     13.5µg/mL

     33

    100.0
    (89.4,100.0)

     28.5µg/mL

    百日せき(PT)

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     128.03EU/mL

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     173.17EU/mL

    百日せき(FHA)

     33

     97.0
    (84.2,99.9)

     53.64EU/mL

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     114.19EU/mL

    ジフテリア
    毒素

     33

     93.9
    (79.8,99.3)

     1.08IU/mL

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     9.65IU/mL

    破傷風毒素

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     0.307IU/mL

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     1.829IU/mL

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):1型

     33

     100.0
    (89.4,100.0)


    551.1倍

     33

     100.0
    (89.4,100.0)


    1642.7倍

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):2型

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     1510.3倍

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     8910.0倍

    弱毒ポリオウイルス(セービン株):3型

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

    1290.2倍

     33

     100.0
    (89.4,100.0)

     5000.6倍

    副反応は93.9%(31例)に認められた。そのうち、接種部位の副反応として紅斑が48.5%(16例)、硬結が12.1%(4例)、腫脹が9.1%(3例)、疼痛が3.0%(1例)に認められた。全身性の副反応は発熱(37.5℃以上)が72.7%(24例)、過眠症が30.3%(10例)、泣きが24.2%(8例)、不眠症が15.2%(5例)、ワクチン接種後の易刺激性が12.1%(4例)、食欲減退が9.1%(3例)に認められた。
    接種回数別の発現割合は以下のとおりであった。

    接種回数別の発現割合[%](発現例数)

    1回目(n=33)

    2回目(n=33)

    3回目(n=33)

    4回目(n=33)

    注射部位紅斑

     9.1(3)

     15.2(5)

     33.3(11)

     18.2(6)

    注射部位硬結

     0.0(0)

     0.0(0)

     9.1(3)

     3.0(1)

    注射部位腫脹

     3.0(1)

     6.1(2)

     0.0(0)

     0.0(0)

    注射部位疼痛

     0.0(0)

     0.0(0)

     0.0(0)

     3.0(1)

    発熱

     33.3(11)

     42.4(14)

     15.2(5)

     36.4(12)

    過眠症

     12.1(4)

     18.2(6)

     3.0(1)

     9.1(3)

    泣き

     15.2(5)

     15.2(5)

     6.1(2)

     6.1(2)

    不眠症

     9.1(3)

     3.0(1)

     3.0(1)

     3.0(1)

    ワクチン接種後の易刺激性

     9.1(3)

     9.1(3)

     6.1(2)

     3.0(1)

    食欲減退

     6.1(2)

     3.0(1)

     0.0(0)

     0.0(0)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

本剤の接種は、百日せき、ジフテリア、破傷風及び急性灰白髄炎の防御抗原に対する血中抗体を誘導し、各々の発症を予防する。また、本剤接種によって誘導される抗PRP抗体は、Hibの菌体表層に結合することで補体系を活性化して殺菌し、感染防御効果を発揮する9)  。

18.2 発症防御又は感染防御レベル

百日せきに対する発症防御は、罹患小児の回復期血清で抗PT抗体及び抗FHA抗体をELISA法により測定した結果から、両抗体ともに少なくとも10EU(ELISA単位)/mL以上が血中に存在すればよいとする報告がある4)  。ジフテリアに対する発症防御は、0.1IU(国際単位)/mLの抗毒素(抗体)が存在すればよいと考えられている5)  。破傷風に対する発症防御は、0.01IU/mLの抗毒素(抗体)が存在すればよいと考えられている6)  。急性灰白髄炎に対する発症防御には、ポリオウイルス1型、2型、3型に対する中和抗体価がそれぞれ8倍以上必要と考えられている7)  。Hibに関しては、外国で行われたHib感染症の疫学研究等により、Hib感染症の予防に必要な抗PRP抗体価(最小感染防御レベル)は0.15µg/mLであり、長期の感染予防に必要な抗PRP抗体価(長期感染防御レベル)は1µg/mLであると考えられている2) ,3)  。

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

シリンジ 0.5mL 1本

24. 文献請求先及び問い合わせ先

田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター

〒541-8505 大阪市中央区道修町3-2-10

電話 0120-753-280

25. 保険給付上の注意

本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

一般財団法人 阪大微生物病研究会

香川県観音寺市瀬戸町四丁目1番70号

26.2 販売元

田辺三菱製薬株式会社

大阪市中央区道修町3-2-10

26.3 **プロモーション提携  

ファイザー株式会社

東京都渋谷区代々木3-22-7



*【ゴービック水性懸濁注シリンジの使用方法】

①接種に使用する注射針を用意する。注射針は、ガンマ線等により滅菌されたディスポーザブル品を用いる。

②ワクチン名、識別色(薄紅色)、製造番号、最終有効年月日を確認後、ケースを開封し、ブリスター容器の蓋フィルムをゆっくりと引きはがす。

③シリンジ胴体をつまんでゆっくりと容器からシリンジを取り出す。

※プランジャーロッド(押し子)をもって無理に引き上げないこと。

※破損や液漏れ、異常な混濁、着色、異物の混入、その他の異常が認められる場合は使用しないこと。

※プランジャーロッドが緩んでいないか確認すること。

④室温になってからシリンジ内の液剤を泡立てないようにしずかに反転し、均等にする。

⑤シリンジ先端を上に向け、シリンジ胴体を指ではじき、シリンジ内の気泡を上部に集める。

⑥シリンジ先端に包装してあるチップキャップラベルとその下に装着されているチップキャップをミシン目に沿ってひねりとる。

※チップキャップを取り外した後は直ちに使用すること。

⑦①で用意した注射針をルアーロックアダプターに時計回りにねじ込み装着する。

※注射針がまっすぐに固定されていることを確認すること。


⑧注射針を少し傾けて、プランジャーロッドをゆっくり押してシリンジ内の気泡を完全に抜き、プランジャーストッパー(押し子先端のゴム栓)を下図のとおり用量線に合わせ接種を行う。

<皮下接種>
⑨皮下に接種する。
  上腕伸側の皮膚をつまみ上げ、皮膚面に斜めに針を刺し、皮下接種する。

⑨皮下1
⑨皮下2

<筋肉内接種>
⑨筋肉内に接種する。
1歳未満の者には大腿前外側部、1歳以上の者には大腿前外側部または三角筋中央部の皮膚面に垂直に針を刺し、筋肉内接種する。
臀部には接種しないこと。
筋肉内接種に当たっては、組織・神経等への影響を避けるため下記の点に注意すること。
・針長は筋肉内接種に足る長さで、神経、血管、骨等の筋肉下組織に到達しないよう、各被接種者に対して適切な針長を決定すること。注)
・神経走行部位を避けること。
・注射針を刺入したとき、激痛の訴えや血液の逆流がみられた場合は直ちに針を抜き、部位を変えて注射すること。

⑨筋肉内1
⑨筋肉内2

⑨筋肉内3

注)接種年齢別の接種部位と標準的な針の長さ

年齢

接種部位

標準的な針の長さ(mm)

乳児(1歳未満)

大腿前外側部

16*1-25

1-2歳

大腿前外側部

25-32

三角筋中央部

16-25

3歳以上

三角筋中央部

16-25

*1 国内の乳児(生後2か月から6か月、n=154)の皮膚厚のデータ*2では、乳児の大腿前外側部において、皮膚から筋肉に到達し骨までの長さは、25mmより短い児がいること、また、皮膚から筋膜までの長さは、全例で16mm未満であることが報告された。したがって、この月齢における針の長さは、筋肉内接種の方法によって個々に検討されなくてはならない(皮膚を伸展して接種する場合には、16mmの針を使用するなど)。
* 2 Nakayama T, Kohdera U, Fujino M, et al. Appropriate needle lengths determined using ultrasonic echograms for intramuscular injections in Japanese infants. Open J Pediatr 2016;6:163-70.

⑨のイラスト及び針の長さの表は、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 小児に対するワクチンの筋肉内接種法について(改訂第2版)2022年1月改訂第2版より作成