オンコビン注射用1mg


作成又は改訂年月

** 2015年2月改訂 8

* 2014年8月改訂 7

日本標準商品分類番号

87424

日本標準商品分類番号等

再評価結果公表年月(最新)
1989年12月

効能又は効果追加承認年月(最新)
2013年3月

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤

承認等

販売名
オンコビン注射用1mg

販売名コード

4240400D1030

承認・許可番号

承認番号
21300AMY00373
商標名
Oncovin for Inj. 1mg

薬価基準収載年月

2001年9月

販売開始年月

2004年4月

貯法・使用期限等

貯法

冷所保存

使用期限

3年(バイアル及び外箱に表示)

規制区分

劇薬

処方箋医薬品

※注意-医師等の処方箋により使用すること

組成

オンコビン注射用1mgは、1バイアル中に次の成分を含有する。

有効成分・含有量

ビンクリスチン硫酸塩 1mg

添加物・含有量

乳糖水和物 10mg

性状

オンコビン注射用1mgは、白色〜微黄白色の凍結乾燥製剤である。

pH

4.0〜6.0

浸透圧比(日局生理食塩液に対する比)

約1(本剤1バイアルを生理食塩液10mLに溶解時)

一般的名称

ビンクリスチン硫酸塩

警告

本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

(次の患者又は部位には投与しないこと)
1. 次の患者には投与しないこと

(1)
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

(2)
脱髄性シャルコー・マリー・トゥース病の患者
[「重要な基本的注意」の項参照]

2. 次の部位には投与しないこと

髄腔内
[「適用上の注意」2.投与経路の項参照]

効能又は効果

1.
白血病(急性白血病、慢性白血病の急性転化時を含む)

2.
悪性リンパ腫(細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病)

3.
小児腫瘍(神経芽腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、睾丸胎児性癌、血管肉腫等)

4.
以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

多発性骨髄腫

悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫

5.
褐色細胞腫

用法及び用量

1. 白血病(急性白血病、慢性白血病の急性転化時を含む)、悪性リンパ腫(細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病)及び小児腫瘍(神経芽腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、睾丸胎児性癌、血管肉腫等)の場合
通常、ビンクリスチン硫酸塩として小児0.05〜0.1mg/kg、成人0.02〜0.05mg/kgを週1回静脈注射する。
ただし、副作用を避けるため、1回量2mgを超えないものとする。

2. 多発性骨髄腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
ドキソルビシン塩酸塩、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとの併用において、標準的なビンクリスチン硫酸塩の投与量及び投与方法は、1日量0.4mgを24時間持続静脈注射する。これを4日間連続で行い、その後17〜24日間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。

3. 悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
ビンクリスチン硫酸塩として1.4mg/m2(体表面積)を、2回静脈注射する。1回目の投与の3週間後に2回目の投与を行い、6〜8週を1クールとし、投与を繰り返す。
ただし、副作用を避けるため、1回量2mgを超えないものとする。

4. 褐色細胞腫の場合
シクロホスファミド水和物、ダカルバジンとの併用において、通常、成人にはビンクリスチン硫酸塩として、1日1回1.4mg/m2(体表面積)を静脈注射し、少なくとも20日間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
ただし、副作用を避けるため、1回量2mgを超えないものとする。なお、患者の状態により適宜減量する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.
外国では体重10kg以下の小児への初期投与量を0.05mg/kg週1回静脈注射すべきであるとされている。

2.
ドキソルビシン塩酸塩、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとの併用において、24時間持続静脈注射を実施する場合は、中心静脈カテーテルを留置して投与すること。

3.
悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(プロカルバジン塩酸塩、ニムスチン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩)においては、併用薬剤の添付文書及び関連文献(「抗がん剤報告書:プロカルバジン塩酸塩(脳腫瘍)」、「抗がん剤報告書:ビンクリスチン硫酸塩(脳腫瘍)」等)を熟読すること。

4.
褐色細胞腫患者において、本剤を含む化学療法施行後に高血圧クリーゼを含む血圧変動が報告されていることから、本剤を含む化学療法開始前にα遮断薬等を投与すること。

使用上の注意

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

1.
肝障害のある患者
[本剤の代謝及び排泄が遅延し副作用が増強する可能性がある。]

2.
腎障害のある患者

3.
骨髄抑制のある患者
[本剤には骨髄抑制作用がある。]

4.
感染症を合併している患者
[本剤には骨髄抑制作用があり、感染症を増悪させることがある。]

5.
神経・筋疾患の既往歴のある患者
[末梢神経障害及び筋障害が強くあらわれることがある。]

6.
虚血性心疾患のある患者
[心筋虚血症状が強くあらわれることがある。]

7.
水痘患者
[致命的な全身障害があらわれることがある。]

8.
高齢者
[「高齢者への投与」の項参照]

重要な基本的注意

1.
本剤の用量規制因子は神経毒性であり、用量依存的に重篤な末梢神経障害及び筋障害が起こることがあるので、使用に際しては、臨床症状、患者の状態を十分に観察し、また臨床検査(末梢神経伝達速度検査、握力測定、振動覚を含む知覚検査など)を定期的に行う。しびれ、麻痺、知覚異常等の異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。
また、シャルコー・マリー・トゥース病の罹患歴、家族歴の調査等を行い、脱髄性シャルコー・マリー・トゥース病が疑われる場合には本剤の投与を行わないこと。

2.
骨髄抑制作用に起因する重篤な副作用(致命的な感染症及び出血)が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。
また、骨髄抑制のある患者、感染症を合併している患者、長期間使用患者等のリスク患者では、副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、適切な治療設備(無菌室、簡易無菌室等)、G-CSF製剤、また抗生剤等の使用に関しても考慮すること。

3.
高度な骨髄抑制による感染症・出血傾向の発現又は増悪に十分注意すること。

4.
治療時に腫瘍が崩壊する腫瘍崩壊症候群(腹部痛、血尿、高尿酸血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、腎不全)を伴うことがある。特に治療開始後3〜4週間は、血清尿酸値上昇を避けるため補液による尿量確保や尿のアルカリ化を促すとともに、頻繁に尿酸値や尿量を測定するなど、患者の状態を十分に観察し注意すること。

5.
小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。

6.
本剤を含む多剤併用化学療法を受けた患者で、非可逆的な性腺障害(精子形成不全(無精子症等)、無月経等)が認められたとの報告があるので、小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。

7.
本剤は脳血液関門を十分に通過しないと考えられるので、白血病性中枢神経障害の合併が認められる症例に使用する場合には、他の療法を併用するなど適切な処置を行うこと。

8.
ドキソルビシン塩酸塩、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとの併用において、24時間持続静脈注射を実施する場合は、直接末梢静脈に投与すると薬液の漏出による組織障害を起こすおそれがあるので、中心静脈カテーテルを留置して中心静脈より投与すること。また、血管内にカテーテルを留置することによる感染症の合併に十分注意すること。

9.
本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用により、肝中心静脈閉塞症(VOD)が発症したとの報告があるので、十分に注意すること。

10.
褐色細胞腫に本剤を使用する際には、関連文献(「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書:ビンクリスチン硫酸塩(褐色細胞腫(傍神経節細胞腫を含む))1)」等)を熟読すること。

相互作用

本剤の代謝は肝チトクロームP-450 3Aが関与するとされていることから、肝チトクロームP-450 3Aを阻害する薬剤との併用において、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

併用注意

(併用に注意すること)

1. 薬剤名等
アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ミコナゾール等)

臨床症状・措置方法
本剤の筋神経系の副作用が増強することがあるので、副作用が発現した場合には、減量、休薬、投与中止等の適切な処置を行うこと。

機序・危険因子
本剤は肝チトクロームP-450 3Aにより代謝される。アゾール系抗真菌剤は肝チトクロームP-450 3Aを阻害するため、併用により本剤の代謝を抑制することがある。

2. 薬剤名等
フェニトイン

臨床症状・措置方法
フェニトインと本剤を含む抗悪性腫瘍剤を同時に投与することで、フェニトインの血中濃度が低下し、痙攣が増悪することがあるとの報告があるので、フェニトインの投与量を調節することが望ましい。

機序・危険因子
本剤は併用によりフェニトインの吸収を減少させる、あるいは代謝を亢進させるとの報告がある。

3. 薬剤名等
神経毒性を有する薬剤(白金含有の抗悪性腫瘍剤等)

臨床症状・措置方法
神経系副作用が増強することがある。白金含有の抗悪性腫瘍剤の場合、聴覚障害(難聴)が増強する可能性がある。

機序・危険因子
ともに神経毒性を有する。

4. 薬剤名等
L-アスパラギナーゼ

臨床症状・措置方法
神経系及び造血器系の障害が増強する可能性がある。毒性を最小にとどめるためにL-アスパラギナーゼ投与の12〜24時間前に本剤を投与することが望ましい。

機序・危険因子
本剤投与の前にL-アスパラギナーゼを投与すると本剤の肝クリアランスを低下させる可能性がある。

5. 薬剤名等
マイトマイシンC

臨床症状・措置方法
ビンカアルカロイド製剤で、マイトマイシンCとの併用時に呼吸困難及び気管支痙攣が発現しやすいことが報告されている。

機序・危険因子
機序不明

6. 薬剤名等
他の抗悪性腫瘍剤

臨床症状・措置方法
骨髄抑制等の副作用が増強することがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら減量するなど用量に注意する。

機序・危険因子
ともに骨髄抑制作用を有する。

7. 薬剤名等
他の抗悪性腫瘍剤

臨床症状・措置方法
他の抗悪性腫瘍剤との併用により、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞等が発現したとの報告がある。

機序・危険因子
機序不明

8. 薬剤名等
放射線照射

臨床症状・措置方法
骨髄抑制等の副作用が増強することがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら減量するなど用量に注意する。

機序・危険因子
ともに骨髄抑制作用を有する。

9. 薬剤名等
放射線照射

臨床症状・措置方法
肝を含む病巣への放射線照射を施行中の患者に、本剤を併用すると肝毒性が増強するとの報告がある。

機序・危険因子
機序不明

副作用

副作用等発現状況の概要

**〈概要〉
承認時における安全性評価対象例は、単独投与例62例及び併用投与例125例であった。そのうち認められた主な副作用はしびれ感62例(33.2%)、脱毛41例(21.9%)、下肢深部反射減弱・消失20例(10.7%)、倦怠感(3.7%)、四肢疼痛(3.2%)、筋萎縮(2.1%)、眩暈(1.1%)、排尿困難(1.1%)であった。
[承認時]
悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(プロカルバジン塩酸塩、ニムスチン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩)の使用成績調査における安全性解析対象例は253例であり、併用療法による副作用及び臨床検査値異常の発現率は、69.6%であった。主なものは白血球減少130例(51.4%)、血小板減少98例(38.7%)、好中球減少23例(9.1%)、貧血22例(8.7%)、肝機能異常28例(11.1%)、食欲不振13例(5.1%)、悪心・嘔吐12例(4.7%)、発疹8例(3.2%)であった。
[調査終了時]

重大な副作用

1. **末梢神経障害(神経麻痺、筋麻痺、痙攣等)
25.5%) 
運動性ニューロパチー(筋麻痺、運動失調、歩行困難、痙攣、言語障害、筋萎縮等)、感覚性ニューロパチー(知覚異常、知覚消失、しびれ感、神経痛、疼痛等)、自律神経性ニューロパチー(起立性低血圧、尿閉等)、脳神経障害(視神経萎縮、味覚障害、眩暈、眼振等の平衡感覚障害等)、下肢深部反射の減弱・消失等があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行うこと。

2. **骨髄抑制
  
汎血球減少(0.7%)、白血球減少(29.8%)、血小板減少(19.8%)、貧血(5.7%)があらわれることがある。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、致命的な感染症(敗血症、肺炎等)や臓器出血等に至った報告がある。

3. 錯乱、昏睡
(頻度不明) 
倦怠感、錯乱、昏睡、神経過敏、抑うつ、意識障害等があらわれることがある。

4. イレウス
(頻度不明) 
腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹痛、腹部膨満あるいは腹部弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)をきたし、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止し、腸管減圧法等の適切な処置を行うこと。

5. 消化管出血、消化管穿孔
(頻度不明) 
消化管出血や消化管穿孔があらわれることがあり、致命的な出血や腹膜炎に至ることがある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

6. 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
(頻度不明) 
低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム増加、高張尿、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。

7. **アナフィラキシー
(頻度不明) 
アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

8. 心筋虚血
(頻度不明) 
心筋梗塞、狭心症、心電図上虚血所見が発現したとの報告がある。

9. 脳梗塞
(頻度不明) 
脳梗塞が発現したとの報告がある。

10. 難聴
(頻度不明) 
一過性又は永続的な難聴があらわれることがある。

11. 呼吸困難及び気管支痙攣
(頻度不明) 
呼吸困難及び気管支痙攣が発現したこと、また、これらの症状はビンカアルカロイド製剤とマイトマイシンCとの併用時に発現しやすいことが報告されている。このような症状が発現した場合には本剤の投与を中止すること。

12. **間質性肺炎
0.5%) 
間質性肺炎があらわれることがあるので異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

13. **肝機能障害、黄疸
0.5%) 
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-P上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

その他の副作用

1. **末梢神経障害
5%以上又は頻度不明 
垂足、背痛、複視

2. **末梢神経障害
0.1〜5%未満 
排尿困難

3. 血液
5%以上又は頻度不明 
顆粒球減少

4. 血液
0.1〜5%未満 
出血傾向

5. 消化器
5%以上又は頻度不明 
悪心・嘔吐、腹痛

6. **消化器
0.1〜5%未満 
食欲不振、便秘、口内炎、下痢

7. 肝臓
5%以上又は頻度不明 
肝機能異常(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇等)

8. **過敏症
0.1〜5%未満 
発疹

9. 皮膚
5%以上又は頻度不明 
脱毛

10. **皮膚
0.1〜5%未満 
発汗亢進、皮膚落屑

11. **
5%以上又は頻度不明 
一過性皮質盲

12. **循環器
5%以上又は頻度不明 
低血圧、高血圧

13. **泌尿器
5%以上又は頻度不明 
多尿

14. **その他
0.1〜5%未満 
発熱、体重減少

**※:頻度不明

高齢者への投与

高齢者では、生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすいので、用量並びに投与間隔に留意すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
[動物実験で催奇形作用が報告されている。]

2.
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には、授乳を中止させること。
[授乳中の投与に関する安全性は確立していない。]

小児等への投与

小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。

過量投与

本剤の過量投与により、重篤又は致死的な結果をもたらすとの報告がある。支持療法として次の処置を考慮すること。

(1)
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の予防(水分摂取の制限及びヘンレ係蹄や遠位尿細管に作用する利尿剤の投与)

(2)
抗痙攣剤の投与

(3)
イレウスを予防するための浣腸及び下剤の使用(症例によっては腸管減圧を行う。)

(4)
循環器系機能のモニタリング

(5)
血球検査を毎日行い、必要であれば輸血を行う。

ホリナート(ロイコボリン)を本剤の致死量が投与されたマウスに使用したところ有効であったとの報告がある。また、ホリナートがヒトにおいても本剤の過量投与の治療に有益であったとする症例報告もある。ホリナート100mgを3時間ごとに8回投与し、その後は6時間ごとに少なくとも8回投与することが推奨されている。ホリナートの投与は支持療法と併せて行う。本剤は透析液中にほとんど流入せず体外除去のための血液透析は有効ではない。

適用上の注意

1. 調製方法

(1)
本剤1バイアルに通常、注射用水、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液10mLを加えて溶解する。
本剤の注射液調製にあたり、注射用水、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液以外の溶解液の使用は望ましくない。

(2)
注射液調製後はすみやかに使用すること。
[保存剤を含有していないため。]

(3)
眼には接触させないこと。眼に入った場合は直ちに水で洗うこと。
[眼に入った場合重篤な刺激や角膜潰瘍が起こることがある。]

2. 投与経路

(1)
静脈内注射にのみ使用すること。

(2)
髄腔内には投与しないこと。
[外国で本剤を誤って髄腔内に投与し、死亡したとの報告があるため、本剤を誤って髄腔内投与した場合は、死に至る麻痺の進行を阻止するよう直ちに救命措置を実施すること。]

3. 投与時

(1)
1回投与量を計算の上、次のいずれか適当な方法により投与する。

1)
静脈内に補液中の管の途中から、1分程度をかけて緩徐に注入する。(点滴容器内で他の薬剤と混合してはならない。

2)
直接静脈内に、1分程度をかけて緩徐に注入する。

3)
中心静脈内に、カテーテルを留置して持続注入する。

(2)
静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると注射部位に硬結・壊死・炎症を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないよう慎重に投与すること。
血管外漏出が疑われるときは直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
また、残量は他の静脈から投与すること。

その他の注意

本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用した患者に、二次性悪性腫瘍(白血病、骨髄異形成症候群(MDS)等)が発生したとの報告がある。

薬物動態

1. 血中濃度(外国人のデータ)2)
急性骨髄性白血病及び悪性リンパ腫各2例に本剤2mgを静脈内注射した後、ラジオイムノアッセイ法で測定した場合、血中濃度が投与直後より急速に低下するα期、比較的ゆるやかに低下するβ期、更に非常に緩徐な低下を示すγ期の3相性のパターンで推移した。(表1参照)

2. 分布(外国人のデータ)2)
急性骨髄性白血病及び悪性リンパ腫各2例に本剤2mgを静脈内注射した後、ラジオイムノアッセイ法で測定した場合の薬物速度論的パラメータは以下の通りである。(表2参照)

(参考)
ラットに3H-ビンクリスチン硫酸塩1.0mg/kgを静脈内注射した場合、脾、甲状腺、副腎、大腸、小腸には血中の20〜70倍の放射活性が分布し、ついで肺、腎、肝、骨髄(血中の7〜20倍)が高く、脂肪細胞、眼球、脳では低値(血中の0.2〜1倍)を示した3)

3. 代謝
主要代謝部位:肝臓
肝チトクロームP-450 3Aが関与するとされている4)

4. 排泄(外国人のデータ)5)
悪性リンパ腫4例に、3H-ビンクリスチン硫酸塩2mg(40μCi/mg)を静脈内注射した後、放射活性を測定した結果、72時間以内に糞中には投与量の約69%、尿中には約12%が排泄された。

表1

投与量 T1/2α
(hr) 
T1/2β
(hr) 
T1/2γ
(hr) 
消失速度定数
(hr-1) 
2mg i.v. 0.077±0.034 2.27±1.50 85.0±68.9 0.085±0.075 

(平均±標準偏差)


表2

投与量 分布容積
(L/kg) 
血清クリアランス
(L/kg/hr) 
2mg i.v. 8.42±3.17 0.106±0.061 

(平均±標準偏差)


臨床成績

全国10研究機関における承認時の臨床検討成績では、小児急性白血病、悪性リンパ腫及び小児腫瘍に高い寛解率を示した。

疾患名 治験例数 寛解例数 寛解率(%) 
白血病:急性白血病(小児) 42 26 61.9 
白血病:急性白血病(成人) 47 17 36.2 
白血病:急性白血病(小計) 89 43 48.3 
白血病:慢性白血病(急性転化) 66.7 
悪性リンパ腫:細網肉腫 21 15 71.4 
悪性リンパ腫:リンパ肉腫 16 10 62.5 
悪性リンパ腫:ホジキン病 19 16 84.2 
悪性リンパ腫:小計 56 41 73.2 
小児腫瘍:神経芽腫 12 66.7 
小児腫瘍:ウィルムス腫瘍   
小児腫瘍:睾丸胎児性癌   
小児腫瘍:横紋筋肉腫   
小児腫瘍:血管肉腫   
小児腫瘍:骨肉腫   
小児腫瘍:網膜芽腫   
小児腫瘍:脂肪肉腫   
小児腫瘍:副腎皮質癌   
小児腫瘍:小計 23 14 60.9 

注1):寛解の判定は、すべて臨床医の報告に基づくものである。
注2):これらの臨床成績には、本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用投与症例の場合も含まれている。


薬効薬理

1. 薬理作用

(1) 動物移植性腫瘍に対する抗腫瘍効果6)
本剤はマウスのP-1534白血病、S-180腹水型腫瘍及びB-82A白血病に対して著明な生存日数の延長をもたらし、また、マウスのRidgeway骨肉腫に対しても、明らかな腫瘍増殖抑制効果を示した。

(2) 細胞学的効果7),8)
細胞の有糸分裂の中期に紡錘体へ作用し、典型的な中期停止(metaphase arrest)像を示す。

2. 作用機序9)
本剤の作用機序の詳細はまだ明らかにされていないが、紡錘体を形成している微小管のチュブリンに結合することにより、細胞周期を分裂中期で停止させると考えられている。

有効成分に関する理化学的知見

一般名
ビンクリスチン硫酸塩
Vincristine Sulfate
(初期にはLeurocristineの名称で記載された。)

略号
VCR、LCR

化学名
Methyl(3aR,4R,5S,5aR,10bR,13aR)-4-acetoxy-3a-ethyl-9-[(5S,7R,9S)-5-ethyl-5-hydroxy-9-methoxycarbonyl-1,4,5,6,7,8,9,10-octahydro-3,7-methano-3-azacycloundecino[5,4-b]indol-9-yl]-6-formyl-5-hydroxy-8-methoxy-3a,4,5,5a,6,11,12,13a-octahydro-1H-indolizino[8,1-cd]carbazole-5-carboxylate monosulfate

分子式
C46H56N4O10・H2SO4

分子量
923.04

構造式

性状
ビンクリスチン硫酸塩は、白色〜淡黄白色の粉末である。
水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。吸湿性である。

包装

1バイアル

主要文献及び文献請求先

主要文献

1)
医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書:ビンクリスチン硫酸塩(褐色細胞腫(傍神経節細胞腫を含む))

2)
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