パロノセトロン静注0.75mg/2mL「日医工」

作成又は改訂年月

2021年 2月作成 ( 第1版 )

日本標準商品分類番号

872391

薬効分類名

5-HT3受容体拮抗型制吐剤

承認等

パロノセトロン静注0.75mg/2mL「日医工」

販売名コード

YJコード

2391404A2026

販売名英語表記

Palonosetron I. V. Injection

販売名ひらがな

ぱろのせとろんじょうちゅう0.75mg/2mL「にちいこう」

承認番号等

承認番号

30300AMX00203000

販売開始年月

2021年 12月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

2年

一般的名称

パロノセトロン塩酸塩注射剤

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

パロノセトロン静注0.75mg/2mL「日医工」

有効成分1瓶(2mL)中
パロノセトロン塩酸塩  0.84mg
(パロノセトロンとして  0.75mg)
添加剤1瓶(2mL)中
D-マンニトール54mg、エデト酸ナトリウム水和物2.5mg、クエン酸ナトリウム水和物18.5mg、クエン酸水和物7.8mg、pH調節剤

3.2 製剤の性状

パロノセトロン静注0.75mg/2mL「日医工」

剤形注射剤
pH4.5~5.5
浸透圧比約1(生理食塩液に対する比)
性状無色澄明の液

4. 効能又は効果

抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)

5. 効能又は効果に関連する注意

本剤は強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)の投与の場合に限り使用すること。

6. 用法及び用量

通常、成人にはパロノセトロンとして0.75mgを1日1回静注又は点滴静注する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 抗悪性腫瘍剤投与前に投与を終了すること。
  2. 7.2 本剤の消失半減期は約40時間であり、短期間に反復投与を行うと過度に血中濃度が上昇するおそれがある。
    1週間未満の間隔で本剤をがん患者へ反復投与した経験はないため、短期間での反復投与は避けること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 消化管障害のある患者

    本剤投与後観察を十分に行うこと。消化管運動の低下があらわれることがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

一般に生理機能が低下している。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)

    ショック、アナフィラキシー(そう痒感、発赤、胸部苦悶感、呼吸困難、血圧低下等)があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

10%以上

1~10%未満

1%未満

頻度不明

精神神経系

頭痛

めまい

不安、多幸感、傾眠、不眠症、過眠症、末梢感覚性ニューロパシー、異常感覚

代謝

糖尿

食欲不振、食欲減退、高血糖、高カリウム血症、低カリウム血症、電解質変動、低カルシウム血症

心臓・循環器

QT延長

低血圧

上室性期外収縮、頻脈、徐脈、心筋虚血、洞性頻脈、洞性不整脈、静脈退色、静脈拡張、高血圧

消化器

便秘(19.0%)

下痢、口内乾燥、上腹部痛

腹痛、腹部膨満、消化不良

腎臓・泌尿器

尿閉

肝臓

高ビリルビン血症

肝機能検査値異常

皮膚

発疹

アレルギー性皮膚炎

呼吸器

しゃっくり

耳鳴

乗り物酔い

眼刺激、弱視

臨床検査

AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、LDH上昇、ALP上昇

その他

血管痛

倦怠感、潮紅、静脈炎

注射部位反応(疼痛、紅斑)、発熱、熱感、悪寒、関節痛、インフルエンザ様症状、無力症、疲労

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与時の注意

  1. 14.1.1 本剤は、30秒以上かけて緩徐に投与すること。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 日本人健康成人に静脈内投与したときのパロノセトロンの薬物動態は3~90μg/kg1)  の用量範囲で線形性を示した。
    日本人健康成人におけるパロノセトロンの薬物動態パラメータ1) ,2)

    用量

    AUC0-inf
    (ng・hr/mL)

    t1/2
    (hr)

    CLtot
    (mL/min)

    Vdβ
    (L)

    10μg/kg

    51.2±9.4

    34.1±3.8

    214±56

    621±126

    (平均値±標準偏差, n=6)

  2. 16.1.2 日本人患者にシスプラチン及びデキサメタゾンの併用下でパロノセトロンを0.75mgの用量で30秒間かけて静脈内投与したとき、血漿中未変化体濃度はほぼ2相性で消失し、最終相の消失半減期は約40時間であった3)  。
    日本人患者におけるパロノセトロンの薬物動態パラメータ2) ,3)

    用量

    AUC0-inf
    (ng・hr/mL)

    t1/2
    (hr)

    CLtot
    (mL/min)

    Vdβ
    (L)

    0.75mg

    66.4±19.3

    41.6±13.1

    203±56

    695±191

    (平均値±標準偏差, n=9)

  3. 16.1.3 外国人健康成人にパロノセトロン0.25mg1)  を15分間かけて点滴静注したとき、同用量を30秒間かけて静注したときと比べて、Cmaxは約60%に低下したが、AUC0-infは同等であった4)  。
    外国人健康成人に0.25mgの用量で点滴静注又は静注したときのパロノセトロンの薬物動態パラメータ4)

    投与

    Tmax*1
    (min)

    Cmax*2
    (ng/mL)

    AUC0-inf*2
    (ng・hr/mL)

    t1/2*3
    (hr)

    CLtot*3
    (mL/min)

    Vdss*3
    (L)

    点滴静注
    (15分間)

    15

    0.851
    (44%)

    20.1
    (25%)

    37.0
    (24%)

    214
    (26%)

    611
    (24%)

    静注
    (30秒間)

    3

    1.38
    (60%)

    20.3
    (21%)

    33.3
    (30%)

    209
    (21%)

    554
    (30%)

    *1中央値、*2幾何平均値又は*3平均値(変動係数)、n=11)

  4. 16.1.4 外国人健康成人にパロノセトロン0.25mg1)  を3日間連日で静脈内投与したとき、投与3日目のAUC0-24hrは投与初日に比べて約2.1倍上昇した5)  。
  5. 16.1.5 外国の臨床試験において、パロノセトロン0.75mgを静脈内投与したとき、軽度、中等度の腎機能障害では薬物動態への明らかな影響は認められなかったが、重度の腎機能障害者では腎機能正常者に比べAUC0-infが1.3倍程度増加した6)  。また、パロノセトロン0.75mgを静脈内投与したとき、肝機能障害はパロノセトロンのAUCに顕著な影響を及ぼさなかった7)  。

16.3 分布

パロノセトロンの血漿蛋白結合率は約62%であった(in vitro)。有色ラットにおいてパロノセトロン又は代謝物のメラニン含有組織(眼球・皮膚有色部)への高い親和性が認められた8)  。

16.4 代謝

外国の臨床試験において、投与されたパロノセトロンの50%程度は代謝を受け、主代謝物としてN-オキシド体と6-S-ヒドロキシ体を生成した。これらの代謝物の5-HT3受容体拮抗作用はパロノセトロンの1%未満であった。この代謝には主にCYP2D6が関与しており、一部はCYP3A4及びCYP1A2も関与していることが示された9)  。外国人健康成人においてCYP2D6活性が欠損又は低い者(PM)と正常な者(EM)との間でパロノセトロンの薬物動態に顕著な違いは見られなかった2)  。

16.5 排泄

外国人健康成人に10μg/kg1)  の14C標識パロノセトロンを静脈内投与したとき、投与後144時間までに投与放射能の約80%が尿中に排泄され、未変化体としての尿中排泄率は約40%であった。また、全身クリアランス160mL/hr/kgに対し、腎クリアランスは66.5mL/hr/kgであった9)  。

1) パロノセトロンの承認用量は0.75mgである。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国内第III相試験

    高度催吐性抗悪性腫瘍剤投与に起因する急性及び遅発性の消化器症状(悪心・嘔吐)に対するパロノセトロン0.75mg単回静脈内投与の有効性についてグラニセトロン40μg/kg単回静脈内投与を対照として比較した10)  。

    投与群*3

    急性期*4*6

    遅発期*5*6

    催吐性抗悪性腫瘍剤*1投与後の嘔吐完全抑制率*2

    パロノセトロン
    555症例

    75.3%
    (418症例)

    56.8%
    (315症例)

    グラニセトロン
    559症例

    73.3%
    (410症例)

    44.5%
    (249症例)

    *1:シスプラチン(≧50mg/m2)、ドキソルビシンとシクロホスファミドとの併用療法、又はエピルビシンとシクロホスファミドとの併用療法
    *2:嘔吐性事象(嘔吐、空嘔吐)なし、かつ制吐処置なしの症例数の割合。
    *3:催吐性抗悪性腫瘍剤投与前に、パロノセトロン0.75mg又はグラニセトロン40μg/kgを単回静脈内投与した。全例にデキサメタゾンが3日間併用投与された。
    *4:高度催吐性抗悪性腫瘍剤投与後0~24時間
    *5:高度催吐性抗悪性腫瘍剤投与後24~120時間
    *6:急性期の嘔吐完全抑制率において、グラニセトロン群に対しパロノセトロン群の非劣性(95%信頼区間-2.70%~7.27%)が認められ、遅発期の嘔吐完全抑制率において、グラニセトロン群に対しパロノセトロン群の優越性(p<0.0001)が認められた。

    パロノセトロンの副作用発現率は30.5%(170/557例)であった。主な副作用は便秘17.4%(97/557例)、ALT増加4.3%(24/557例)、頭痛3.2%(18/557例)、AST増加2.9%(16/557例)、心電図QT補正間隔延長2.7%(15/557例)、血管障害2.3%(13/557例)であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

5-HT3受容体において選択的な拮抗作用を示す。

18.2 各種受容体との親和性

ヒト5-HT3受容体に対するパロノセトロンのpKi値は10.01であった11)  (in vitro)。

18.3 制吐作用

  1. 18.3.1 パロノセトロン0.01mg/kgを静脈内投与すると、ダカルバジン、アクチノマイシンD又はメクロレタミン投与により誘発されたイヌの嘔吐を抑制した。また、イヌのシスプラチン誘発性嘔吐を抑制した。その最小有効用量は、0.001mg/kgであった12)  。
  2. 18.3.2 シスプラチンが誘発するフェレットの嘔吐を、0.001mg/kgから有意に抑制し、0.003mg/kg以上の静脈内投与においてほぼ完全に抑制した12)  。

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

パロノセトロン塩酸塩(Palonosetron Hydrochloride)

化学名

(3aS)-2-[(3S)-Quinuclidin-3-yl]-2, 3, 3a, 4, 5, 6-hexahydro-1H-benzo[de]isoquinolin-1-one monohydrochloride

分子式

C19H24N2O・HCl

分子量

332.87

性状

白色~灰白色の結晶性の粉末である。
水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けにくい。

化学構造式

20. 取扱い上の注意

  1. 20.1 紙箱から取り出して長期間保存した場合は、光により分解するため、紙箱から取り出した後は速やかに使用するか又は遮光を考慮すること。

22. 包装

2mL×5瓶

24. 文献請求先及び問い合わせ先

日医工株式会社 お客様サポートセンター

〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21

TEL(0120)517-215
FAX(076)442-8948

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

日医工株式会社

富山市総曲輪1丁目6番21