*2008年4月改訂(第2版)
薬効分類名
体外診断用医薬品
一般的注意事項
使用の前にこの添付文書をよく読むこと。
承認・届出等
販売名
Loopamp SARSコロナウイルス検出試薬キット
添付文書管理コード
21500AMZ00542000_A_01
製造販売承認番号
21500AMZ00542000
承認・認証年月等
平成15年12月
一般的名称
一般的名称
84014000
SARSコロナウイルス核酸キット
重要な基本的注意
○ 本製品の検査対象はSARSが疑われる有症状者とすること。
○ 本製品で判定が陰性であっても、疾患としてのSARS感染を否定するものではない。
○ 診断はWHOの最新の症例定義を参照し、臨床症状も含めて総合的に判断すること。本製品はあくまでSARSが疑われる有症状者を対象とする診断の補助を行うためのものである。
○ 本製品の臨床性能試験におけるSARS患者検体の陽性率は次のとおりであった。
SARS発症当時のWHOの症例定義に従ってSARS可能性例とみなされた症例から得られた検体について、リアルタイム濁度検出による陽性率は、検体別に糞便:81.0%(64/79)、鼻腔咽頭拭い液:56.3%(9/16)であった。また、蛍光目視検出による陽性率はそれぞれ順に、77.2%(61/79),56.3%(9/16)であった。
一方、非SARS患者,不明(施設が非SARS患者と考えている例),健常人の血清及び血漿、その他の97検体は、本製品によるリアルタイム濁度検出,蛍光目視検出ともに全て陰性であった。
検体は糞便を第一選択とする。鼻腔咽頭拭い液についても検体とすることが可能である。
○ 検体採取,取扱いについては必要なバイオハザード対策をとること。(詳細は【操作上の注意】参照。)
○ 反応後のチューブのキャップは決して開けないこと。
他検体の増幅産物によるコンタミネーションは誤判定の原因となるばかりでなく、試験環境そのものを汚染し、汚染を除去しない限り、以後の試験で正しい結果が得られなくなる可能性がある。
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全般的な注意
1.本製品はSARSコロナウイルス検出の臨床診断を目的とした検査にのみ使用すること。動物由来検体その他の診断目的には使用できない。
2.本製品の性能に由来しない事由(操作方法を誤った場合等)による誤った判定、またその判定に由来して発生した事項に対して、当社は一切の責任を負わない。
3.遺伝子検査の知識や経験をもたない場合、検査結果の判定を誤る危険性がありうるので、本製品の使用に当たっては遺伝子検査の知識、経験を有した技術者の指導の下で検査を実施すること。
4.使用する試薬及び装置の添付文書及び取扱説明書をよく読んでから使用すること。
形状・構造等(キットの構成)**
**リアクションミックスSARS(RM SARS) 1.0mL×1本 |
| 1反応あたり下記成分含有 |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 FIP(SARS-FIPと略) 403.3ng |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 F3(SARS-F3と略) 30.1ng |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 BIP(SARS-BIPと略) 478.1ng |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 B3(SARS-B3と略) 29.1ng |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 LoopF(SARS-LoopFと略)90.3ng |
SARSコロナウイルス特異的プライマー※1 LoopB(SARS-LoopBと略)128.4ng |
デオキシアデノシン5'-3リン酸(dATPと略) 17.2μg |
デオキシシチジン5'-3リン酸(dCTPと略) 16.4μg |
デオキシグアノシン5'-3リン酸(dGTPと略) 17.8μg |
デオキシチミジン5'-3リン酸(dTTPと略) 16.9μg |
硫酸マグネシウム 24.1μg |
エンザイムミックス(EM) 50μL×1本 |
| 1反応あたり下記成分含有 |
鎖置換型DNA合成酵素※2(BST DNA polと略) 16U |
逆転写酵素※3(RTと略) 2U |
蛍光・目視検出用試薬(FD) 0.1mL×1本 |
| 1反応あたり下記成分含有 |
カルセイン 0.35μg |
塩化マンガン 1.43μg |
陽性コントロールSARS(PC SARS)※4 0.1mL×1本 |
| (SARS RNAとしておよそ2×106コピー/テスト含有)※5 |
蒸留水(DW) 1.0mL×1本 |
※1:SARSコロナウイルス(GenBank No.NC_004718)のReplicase領域内に設定したプライマーで、合成オリゴヌクレオチドをHPLCで精製したもの。
※2:Bacillus stearothermophilus由来のDNA Polymerase Iから5'→3'exonuclease活性を除いた鎖置換型DNA合成酵素。
※3:Avian Myeloblastosis Virus由来の逆転写酵素。
※4:陽性コントロールSARS(PC SARS)は、SARSコロナウイルスgenome RNA(Replicase 1B上)由来のcDNAを鋳型として試験管内転写反応により得た産物を含有。
※5:出荷調製時の含有量。ただし、輸送等により力価が落ちることがある。
構成試薬チューブには、次の略名とロット番号、製造販売業者の略号(EKN)が記載されている。また、キャップには次の略号が記載されている。
使用目的
糞便・鼻腔咽頭拭い液から抽出されたSARSコロナウイルスRNAの検出(SARSが疑われる有症状者を対象とする診断の補助)
測定原理
本製品は、栄研化学が開発した新規核酸増幅法であるLAMP(Loop−mediated Isothermal Amplification)法を測定原理としている。LAMP法は、(1)遺伝子増幅反応が等温で進行する1),2)、(2)6領域を認識する4種類のPrimerを使用するため特異性が高い、(3)増幅効率が高く、短時間に増幅可能である、(4)増幅産物量が多く、簡易検出に適している3),4),5)等の特徴を有した方法である。
本製品は、SARSコロナウイルスgenome RNAのReplicase 1B領域内にLAMP法用のプライマーを設計してある。この領域は他のコロナウイルスとのホモロジーが十分低く、逆に現在遺伝子データベースに登録されている47種類のSARSコロナウイルスでは比較的保存された領域であるため、LAMP法で増幅することにより、極めて特異的にSARSコロナウイルスを検出することが期待できる。
はじめに、ウイルスRNA分離用試薬を用いてヒト由来検体中のRNAを抽出し、サンプル溶液を調製する。このサンプル溶液と6種類のSARSコロナウイルス特異的プライマー,4種類のデオキシヌクレオチド3リン酸,逆転写酵素,鎖置換型DNA合成酵素,カルセインを混合し62〜63℃でインキュベートすると、サンプル溶液中のSARSコロナウイルスRNAを基に逆転写酵素によりcDNAが合成される。このcDNAから鎖置換型DNA合成酵素により増幅反応が進行する。
核酸増幅の検出は、反応副産物であるピロリン酸マグネシウム(白色沈殿物質)による濁度を測定することにより行う3),4)。また、紫外線照射装置を用いることにより目視での判定(以下、蛍光目視判定又は検出と呼ぶ。)も可能である。試薬中に含まれているカルセインは、反応前にはマンガンイオンと結合して消光しているが、LAMP反応が進行すると、生成するピロリン酸イオンにマンガンイオンを奪われるため蛍光を発するようになる5)。
なお、本製品は定性検出キットであり、定量測定目的に開発されたものではない。
操作上の注意
測定試料の性質、採取法
採取した患者検体は感染の危険性があるので、必要なバイオハザード対策を実施すること。検体採取,検体の取扱い場所及び取扱う際の装備等については、施設の安全規定に従うこと。
現在、国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)では、SARS関連の患者検体はBiosafety Level(BSL)2以上で扱うこととなっている。具体的には、個人防護用具personal protection equipments:PPE(マスク,ゴーグル,手袋,ガウン,キャップ)を着用することを推奨している。
検査に関する詳細、並びに最新情報については、IDSCホームページ(http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/index.html)を参照のこと。
検体は糞便を第一選択とする。
鼻腔咽頭拭い液についても検体とすることが可能である。
なお、血液検体を用いた際の有効性については確認されていない。
3)検体の採取方法
(1)糞便
直径0.5cm〜1.0cm程度の糞便を蓋付き容器に入れ、パラフィルムにてシールし、ビニール袋に入れ、検査室へ持ち込む。
(2)鼻腔咽頭拭い液
鼻腔拭い液の場合には両方の鼻孔内を、咽頭拭い液の場合には咽頭後壁及び扁桃領域を拭い、スワブを2mLウイルス輸送液体培地(ウイルス輸送液体培地が無い場合は生理食塩水)に入れ柄を折りとった後に、蓋をして検査室に持ち込む。(綿棒が乾燥する状態や、大量の液体に浸した状態ではウイルスの検出が困難になる。1.5〜2mLであれば綿棒が適度に液体に浸る程度となり、ウイルスの検出に最適となる。)
4)試験材料の調製方法
試験材料は、国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)プロトコールに従って調製を行う※6。詳しくは、IDSCのホームページ「RT−PCR法によるSARSコロナウイルス遺伝子の検出」(http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update99-PCR.html)、及び「SARSコロナウイルスに関する検査対応について」(http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update111-ke.html)を参照のこと。
(1)糞便
約10〜30倍量程度の0.89%NaCl溶液に懸濁する。4000×gで20分遠心後、上清を0.22μmのフィルターでろ過し、140μLをAVL buffer 560μLと混合する。
(2)鼻腔咽頭拭い液
140μLをAVL bufferと混合する。粘性がある場合、QIAamp Viral RNA Mini Kitでは検体の粘性を除く前処理を必要とする。
なお、検体の粘性を除く方法として次の方法が報告されている。「検体に対して等容のNALCバッファー(0.9%NaCl,10g/LN-acetyl-L-cysteine)を添加し、穏やかに30分間振盪する。遠心して上清の140μLを抽出に使用する。(N.Engl.J.Med.2003 348:1967−1976)」
※6:検体の安定性は判っていないので、検体は速やかにRNA抽出操作を行うこと。なお、検体を保存する場合は、−80℃以下で保存すること。(国立感染症研究所ホームページより)
妨害物質・妨害薬剤
遊離型ビリルビン(10.2mg/dL),抱合型ビリルビン(19.8mg/dL),乳ビ(ホルマジン濁度2,470度)による測定への影響は認められなかった。
ヘパリンは12.5U/mLでは、増幅反応開始時間の遅延をもたらし、50U/mLでは陽性検体の陰性化が認められた。EDTA(7.5mg/mL)及びクエン酸Na(1.26%)による測定への影響は認められなかった。
交差反応性
SARSコロナウイルスと同じ科に属する他のコロナウイルス、及び発熱の臨床症状を伴うウイルスについて測定したところ、結果は次の表のとおり全て陰性であり、交差反応は認められなかった。
ヒトコロナウイルス(Serogroup G1) | 2株 | 陰性 |
ヒト腸コロナウイルス(Serogroup G1) | 1株 | 陰性 |
猫コロナウイルス(Serogroup G1) | 3株 | 陰性 |
牛コロナウイルス(Serogroup G2) | 3株 | 陰性 |
犬コロナウイルス(Serogroup G1) | 2株 | 陰性 |
ウサギコロナウイルス | 1株 | 陰性 |
ラットコロナウイルス(Serogroup G2) | 1株 | 陰性 |
マウス肝炎ウイルス(Serogroup G2) | 1株 | 陰性 |
豚伝染性胃腸炎ウイルス(Serogroup G1) | 1株 | 陰性 |
インフルエンザウイルスA | 8株 | 陰性 |
インフルエンザウイルスB | 4株 | 陰性 |
PSウイルス(呼吸器合胞ウイルス) | 2株 | 陰性 |
鶏伝染性気管支炎ウイルス | 1株 | 陰性 |
麻疹ウイルス | 1株 | 陰性 |
デング熱ウイルス | 1株 | 陰性 |
黄熱ウイルス | 1株 | 陰性 |
用法・用量(操作方法)
試薬の調製方法
1)−20℃で保存していた各試薬を室温で解凍し、解凍後は直ちに氷上で保存する。
2)マスターミックスの調製(氷上で行うこと。)
(1)別途用意したマスターミックス調製用滅菌チューブにリアクションミックスSARS(RM SARS)1テストあたり20μLと蛍光・目視検出用試薬(FD)1テストあたり1μL,及びエンザイムミックス(EM)1テストあたり1μLをそれぞれ必要な検体数分と陽性,陰性コントロール分を分注する。
(2)分注後、チューブを軽く数回叩いて混合する(以下、タッピングと呼ぶ。)か、又は転倒混和、あるいはボルテックスミキサーにて1秒間×3回の撹拌により十分混合した後、微量簡易遠心機に数秒かけて(以下、スピンダウンと呼ぶ。)、これをマスターミックスとする。ボルテックスミキサーでの撹拌を過剰に行うと、酵素が失活する可能性があるので1秒間×3回を厳守すること。なお、調製したマスターミックスはすぐに使用すること。
必要な器具・器材・試料等
1)ウイルスRNA分離用試薬(QIAamp Viral RNA Mini Kit,QIAGEN)及びマイクロ遠心機
2)抽出液回収用チューブ(Axygen社1.5mLミニスーパーチューブLow retention type(MCT-150-L-C))
3)ピペット(0.5〜10μL,10〜100μL,100〜1,000μL)及びフィルター付きチップ
4)マスターミックス調製用滅菌チューブ(0.5mL,1.5mL)
5)Loopamp反応チューブ(栄研化学株式会社別売品)
6)冷却用アルミ製ラック及び氷(クラッシュアイス)
7)微量簡易遠心機
8)8連マイクロチューブ用簡易遠心機
**9)リアルタイム濁度測定装置(LAMP法専用、波長:600〜700nm、増幅温度:62〜63℃)
10)ボルテックスミキサー
なお、蛍光目視検出には、リアルタイム濁度測定装置の代わりに次のものが必要となる。
・インキュベーター(温度精度が±0.5℃以内:ホットボンネット付)
・ヒートブロック
・紫外線照射装置(波長254〜366nm)
・広幅の眼鏡又は防護面
試験材料液140μLからウイルス分離用試薬(QIAamp Viral RNA Mini Kit)を使用してRNA抽出液を採取する※7。この際、キャリアRNA量は1検体(1カラム)あたり3μgとし、溶出は60μLのAVE bufferで1回行う。RNA抽出操作の詳細はQIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)の使用方法に従う。
なお、抽出液の回収は、核酸低吸着のAxygen社の1.5mLミニスーパーチューブ Low retention type(MCT-150-L-C)を使用する。
※7:サンプル溶液(RNA抽出液)は原則として直ちに測定すること。(なお、4℃及び−80℃以下で保存した場合、24時間は安定とのデータはある。)また、長期に保存する場合は−80℃以下に保存し、凍結融解の繰り返しは避ける。
測定(操作)法
1)マスターミックスとサンプル溶液の混合(氷上で行うこと。)
(1)反応チューブにマスターミックス20μLを分注する。
(2)サンプル溶液5μLを添加し、全量25μLとする。このとき、ピペッティング又はキャップを閉めた上でのタッピングにより良く混合した後、スピンダウンを行う。混合の際は気泡が立たないように注意すること。(このとき、反応チューブにサンプル溶液が添加されていることを目視で確認すること。)
なお、コントロール反応用に、サンプル溶液の代わりに陽性コントロールSARS(PC SARS)※85μLを添加した陽性コントロールと、蒸留水(DW)5μLを添加した陰性コントロールを作製する。
※8:陽性コントロールSARS(PC SARS)は高コピー数である。陽性コントロールSARS(PC SARS)から他のサンプルへのコンタミネーションを避けるため、まず、蒸留水(DW)とサンプル溶液を(1)の反応チューブに添加し、陽性コントロール用反応チューブ以外のすべての反応チューブのキャップを閉め、最後に陽性コントロールSARS(PC SARS)を添加すること。また、陽性コントロールSARS(PC SARS)を扱う際は、キャップを開ける前に必ずチューブをスピンダウンし、キャップを開けている時間も必要最小限となるようにすること。
2)増幅反応及び判定
原則として標準法(リアルタイム濁度測定装置を用いた濁度検出)を使用する。
(1)リアルタイム濁度測定装置(LAMP法専用)のプログラムを本製品用にあわせて設定する。
(2)表示温度が62.5℃に達していることを確認する。(リアルタイム濁度測定装置は使用の約20分前までに立ち上げること。)
(3)調製した試料をセットし測定を開始する。
(4)装置の表示画面上で陽性コントロールと陰性コントロールの濁度の上昇の有無を確認する。陽性コントロールSARS(PC SARS)で濁度が上昇し、陰性コントロール(蒸留水;DW)で濁度が上昇していなければ、増幅反応は正常に進行している。それ以外の場合には、増幅反応が適切に進行していない可能性があるため、試薬調製からの再検査を実施する必要がある。(図1)
(5)次に、各検体の判定を行う。増幅反応時間内(45分間)に濁度の上昇が認められた場合を「陽性」,濁度の上昇がみられない場合を「陰性」とする(図2)
なお、検体によって濁度上昇開始時間や濁度上昇値が陽性コントロールSARS(PC SARS)と異なる場合がある。
(6)酵素失活処理(リアルタイム濁度測定装置では自動処理される。)が終了していることを確認した後、装置から反応チューブを取りだし、そのままキャップを開けずに廃棄する。
リアルタイム濁度検出(標準法)時の操作手順
(1)インキュベーター(温度精度が±0.5℃以内:ホットボンネット付)を62〜63℃に設定し、表示温度が設定温度に達していることを確認する。
(2)調製した試料をセットし、増幅反応(62〜63℃,45分間)を行う。
(3)45分後にヒートブロックを用いて酵素失活操作(80℃,5分間又は95℃,2分間)を行う。
(4)判定は、紫外線照射装置を用いて反応チューブ底面より紫外線を照射して、反応チューブ側面より目を眼鏡等で保護した状態で観察して行う。陽性コントロールSARS(PC SARS)と同様に緑色の蛍光を発すれば陽性※11で、陰性コントロール(蒸留水;DW)と同様に蛍光を発しなければ陰性と判定する。
※11:検体によって、陽性コントロールよりも強く蛍光を発することがあるが、蛍光の強さと検体のコピー数の間に相関はない。
LAMP反応は非常に鋭敏な反応であり、増幅産物等のDNAがごく微量でも混入すると誤った結果をもたらす原因となる恐れがある。このようなコンタミネーションを回避するために、サンプル抽出操作と試薬調製は別々のクリーンベンチ等を使用して行うこと。なお、電気泳動等での増幅産物の取扱いは避けること。
RNA分子は非常に不安定なため、取扱いには注意が必要である。特にRNA分解酵素(RNase)により容易に分解されてしまう。RNaseは材料である検体(血液又は尿等)や組織等,検査器具,試薬,水,さらには検査従事者自身の唾液や汗からも混入する恐れがあるうえ、熱に強くオートクレーブ処理でも完全に失活させることができない。このため極力RAaseが混入することを防ぐことが重要であり、そのために以下の注意が必要となる。
・RNA検査を行う検査台や検査器具を他と区別する。
・検査に使用するチューブ等は滅菌された使い捨てのものを使用する。
・検査に使用する水は、DEPC処理水などRNase freeの水を用いる。
・検査従事者は、必ず手袋、マスクを着用し、検査従事者自身の唾液や汗からのRNaseの混入を防ぐ。
1)試薬の解凍は室温で行い、調製,保存は必ず氷上で行うこと。試薬を使用する際には、一旦スピンダウンしてチューブの管壁やキャップに付着している試薬を落とした後、十分混合し再度スピンダウンしてから使用する。なお、エンザイムミックス(EM)は失活する恐れがあるので、激しく撹拌しないこと。
2)マスターミックスとサンプル溶液を混和後、反応液に気泡が残っていると濁度測定の支障となり誤判定の原因となるので、気泡が生じないよう注意すること。気泡が残っている場合には、スピンダウンして気泡を取り除くこと。
3)蛍光目視判定は、酵素失活操作(80℃,5分間又は95℃,2分間)後に行うこと。酵素失活操作を怠たると誤判定する可能性がある。(リアルタイム濁度測定装置では、酵素失活操作は自動処理される。)
記録が必要な場合は、判定時にデジタルカメラなどを用いて画像として保存する。
4)反応後のチューブのキャップは決して開けないこと。特に反応チューブを装置から取り出すときにチューブのキャップが開かないよう慎重に取り出すこと。検体の増幅産物によるコンタミネーションは誤判定の原因となるばかりでなく、試験環境そのものを汚染し、汚染を除去しない限り、以後の試験で正しい結果が得られなくなる可能性がある。
測定結果の判定法
陽性コントロール(PC SARS)で濁度が上昇し、陰性コントロール(蒸留水;DW)で濁度が上昇していないことを確認した上で、各検体の濁度の上昇が認められた場合を「陽性」,濁度の上昇がみられない場合を「陰性」とする。コントロールの判定が異常な場合は試薬調製からの再検査を実施する必要がある。
本製品の検出感度は10コピー/テストとなっている。本製品で陰性と判定されても、SARSコロナウイルスの感染を否定できるものではない。判定の結果が陰性であっても、症状が持続しSARSが否定できない状況では再度検査を実施する必要がある。
測定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果とあわせてWHOの最新の症例定義を参照し、総合的に判断すること。
AY304488株はプライマー設定領域内の3'末端に一箇所の変異が存在し、この変異は本製品での検出感度を低下させる可能性が考えられる。また、SARSコロナウイルスは、今後この領域内で変異する可能性がある。
臨床的意義
2002年11月、中国広東省における重篤な非定型肺炎の流行に端を発し、世界各地で猛威を振るい多数の患者と死者を出したSARSは、WHOが地球規模で警戒すべき原因不明の感染症としてGlobal Alertをかけ、世界中を震撼させた。WHOを中心に、各国の研究機関が懸命に原因微生物の特定に努力した結果、新型のコロナウイルスが分離・同定され、SARSコロナウイルスはエンベロープを有する球形で表面に王冠の形をした突起(スパイク)を有する直径100nmのウイルス粒子であり、約3万塩基のゲノムサイズを持つプラスの1本鎖RNAであることが判明した。
本製品を用いて、国立感染症研究所を中心とする国際協力による検討と長崎大学熱帯医学研究所による検討について、WHOの症例定義に従った臨床診断、及び検体の種類別に、本製品による判定結果を集計した結果を次の表に示す。
発症当時のWHOの症例定義に従ってSARS可能性例とみなされた症例から得られた検体について、リアルタイム濁度検出による陽性率は、検体別に糞便:81.0%(64/79),鼻腔咽頭拭い液:56.3%(9/16),鼻腔咽頭うがい液,吸引液及び喀痰:42.9%(6/14),血清:26.9%(21/78)であった。また、蛍光目視検出による陽性率はそれぞれ順に、77.2%(61/79),56.3%(9/16),28.6%(4/14),24.1%(14/58)であった。
更に、SARS疑い例,可能性例,不明(過去にSARS陽性と判定された例)と、SARS患者接触者からの血清及び血漿検体では、本製品のリアルタイム濁度検出による陽性率は12.4%(24/193)、蛍光目視検出による陽性率は12.1%(22/182)であった。
一方、非SARS患者,不明(施設が非SARS患者と考えている例),健常人の血清及び血漿,その他の97検体では、本製品によるリアルタイム濁度検出,蛍光目視検出ともに全て陰性であった。
性能
1.感度・正確性
陰性管理検体(濃度0コピー/テスト)、陽性管理検体1(濃度10コピー/テスト)、陽性管理検体2(濃度400コピー/テスト)を測定したとき、陰性管理検体は陰性に、陽性管理検体1及び2は陽性に判定される。
2.同時再現性
管理検体を5回同時に測定したとき、陰性管理検体はすべて陰性に、陽性管理検体はすべて陽性に判定される。
3.最低検出感度
陽性検体3検体を希釈して74〜0.49コピー/テストの各濃度の検体を作製し、複数回測定したところ、最小検出感度(50%以上の検出率)は2.3〜9.2コピー/テストであり、100%の検出率を示す検出感度は、10コピー/テストと考えられた。
使用上又は取扱い上の注意
取扱い上(危険防止)の注意
1)蛍光目視判定時に紫外線照射装置を使用する場合、ランプより放射される紫外線(殺菌線)は有害で、点灯中のランプを短時間見つめただけでも後で目が痛くなり、結膜炎に似た症状を起こす場合があるので、紫外線を直接目に入れることは避けること。また点灯中のランプを見る必要があるときは、必ずガラス板を通すか、広幅の眼鏡又は防護面をかけて判定すること。
使用上の注意
1)本製品は必ず−20℃で保存し、試薬の劣化を防止するために、使用時は必要な試薬だけを箱から取り出して使用すること。(凍結融解を20回繰り返した結果では、試薬の劣化は認められていないが、無用な凍結融解は品質維持のため避けること。)
2)検査環境へのコンタミネーションを避けるため、陽性コントロールSARS(PC SARS)は本添付文書に記載の操作方法以外での使用(希釈や検体などへの添加等)は、絶対に行わないこと。
3)陽性コントロール及び陽性と疑われる検体等は、他の試薬と離して保管すること。
4)本製品は外箱に表示の使用期限(Exp.date)内に使用すること。
(反応チューブの取扱い)
1)反応チューブは必ず専用のLoopamp反応チューブを使用すること。指定以外の反応チューブを使用した場合、光透過性の違いにより誤判定を招く可能性がある。
2)反応チューブ、マスターミックス調製用滅菌チューブはUV照射しないこと。UV照射による変色等で誤った結果をもたらす場合がある。
3)反応チューブは破損しやすいので、取扱いには注意すること。
4)反応チューブは用いる前にキズ・ヒビ等が無いことを目視で確認すること。反応チューブにキズ・ヒビ等があると正しく測定できないばかりか、チューブの破損により装置を汚染する可能性がある。リアルタイム濁度測定装置の反応ブロック内でチューブが破損した場合は、反応液が装置本体へ漏出し、除去不能な汚染や故障の原因となる。
廃棄上の注意
1)反応後のチューブはキャップを開けずに、焼却処理又は密閉できるビニール袋を二重に施し医療廃棄物として処理する。増幅産物の飛散防止のため、廃棄の際にオートクレーブ処理は行わないこと。
2)試薬チューブはPP、キットケースは紙を主な材質としている。廃棄の際は医療廃棄物等に関する規定及び、水質汚濁防止法等の各種規制に従い、各施設の責任において処理すること。
1.市販後の臨床使用上の性能等に関する使用成績を収集し、報告すること。
2.以下の点を含め、本品の臨床使用上の性能を向上させるために臨床性能試験をさらに実施し、その結果を報告するとともに、必要に応じて速やかに一部変更申請を行うこと。
・発症前からの検出率のデータの収集を行い、適切な検体採取時期を検討すること。
・採取検体及びRNA抽出液の保存安定性を検討すること。
・血液を検体として使用することを検討すること。(濃縮効果、薬剤が測定系に及ぼす影響の検討を含む。)
貯蔵方法、有効期間
貯蔵方法
−20℃
有効期間
6ヵ月間
包装単位
製 品 名 | 包装単位 | 製品コード |
Loopamp SARSコロナウイルス検出試薬キット | 48テスト分 | LMP401 |
主要文献
主要文献
1)Notomi T.,et al.:Nucleic.Acids.Research.28,No.12 e63(2000)
2)Nagamine K.,et al.:Clin.Chem.47,No.9,1742−1743(2001)
3)Mori Y.,et al.:Biochem.Biophys.Res.Commun.289,No.1 150−154(2001)
4)森安義 他:第23回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集(2000)
5)富田憲弘 他:第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集(2003)
製造販売業者の氏名又は名称及び住所
氏名又は名称(製造販売業の種別)
栄研化学株式会社
第二種医薬品製造販売業
住所等
〒329-0114 栃木県下都賀郡野木町野木143番地
電話番号
0280-56-1250
問い合わせ先
氏名又は名称
住所等
〒110-8408 東京都台東区台東4丁目19番9号 山口ビル7
電話番号
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