事例報告内容
【記述項目】
一般的名称 酸素吸入加温加湿装置用水
販売名 カームピュアー呼吸治療器
製造販売業者名 泉工医科工業株式会社
購入年
事例の具体的な内容 弓部大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術人工血管置換術施行後の患者。術後、右無気肺を繰り返し呼吸リハビリ実施していた。PO2(70-90)pCO2(40-50)、FiO2:50%ベンチュリーマスク、SpO2:90-92%で経過していた。9時過ぎにSpO2:90-92%である事を確認し、看護師2名で全身清拭を行った。その後車椅子移動を予定していたため、酸素チューブ延長用のコネクティングチューブにコネクター(サフィードコネクター200)をつなぎ、ベンチュリーマスクの酸素チューブに接続し、患者を端座位とした。その際、ピューという高音が発生しSpO2:88%へ低下した。車椅子乗車を中止し、延長用のコネクティングチューブとコネクターを外し患者をベッド上へ戻した。SpO2は改善せず、73%迄低下した。酸素をフラッシュするがSpO2改善なく、バッグバルブマスクへ変更し、主治医をコールした。主治医到着後血ガスをフォローし、10時、酸素を15Lリザーバーマスク(インターサージカル酸素投与キッド)へ変更した時、リザーバーが膨らまず、酸素投与経路を確認したとろカームピュア加湿・吸入専用水のリサーキュレーションチューブ接続口のフィルムが半分剥がれているのを発見した。カームピュア加湿・吸入専用水バックを外し、酸素流量計に直接ニップルナットに繋ぎ、SpO2は95から96%へ改善した。その後、ニップルナットに直接、チューブを接続しベンチュリーマスクを用いて酸素流量FiO2:50%で投与した。変更後は、SpO2は86-87%で低めであったが、血液ガスデータでpCO2:80台とCO2の蓄積を認めICUにて挿管し呼吸器装着となった。
事例が発生した背景・要因 ・元々CO2蓄積傾向であり、換気状況は不良だった。・カームピューア加湿・吸入専用水バックの口栓部破損に伴い酸素投与量が下がった可能性がある。・カームピューア加湿・吸入専用水バックを8時頃交換した。その際ピーという異音がしたが消失した。・異音がしたが消失したので大丈夫だと思った。・メーカーが提供しているヒューミディーファイヤー方式取り扱い説明書(気泡式)には、併用禁止に取説上最も小さなフォント、緑文字で『ベンチュリーマスクとの併用はしないでください。』と記載されていた。・製品導入時、院内の研修では併用禁止の説明はされなかった。・カームピューアー呼吸治療器添付文書には、使用上の注意について記載のなかに併用注意としてベンチュリーマスク等について、『背圧によりアラームが作動する場合がある。』と記載されていた。・併用禁止なのか、併用注意なのか同じメーカーより出されている文書に違いがあった。
実施した、若しくは考えられる改善策 ・ベンチュリーマスクとヒューミディーファイヤー方式(気泡式)併用禁止を行なった。・本事例に関する注意情報としてセフティトピックを発行する。・ベンチュリーマスクによる酸素療法とコールドネブライザー(エアロゾル療法)の使い分けに関する周知を行なう。

事例検討結果
事例検討結果 当該事例については、薬機法に基づき、不具合報告が提出されている。当該製品のヒューミディファイヤーアダプターとベンチュリーマスクを併用する場合には、背圧によりアラームが発生するため高圧・高流量での使用は行えない旨が添付文書で既に注意喚起されていたが、取扱説明書との記載の齟齬もあり、使用者が正しい意図を理解できていなかった。そのため、アラーム作動時に異常を確認することなく、アラーム音が鳴り止むまで流量を下げ、使用を継続してしまった。当該事象を受けて、添付文書及び取扱説明書が改訂され、ベンチュリーマスクに関しては併用注意に統一し、アラーム作動時は患者に必要な酸素が流れない可能性があること及び高圧にて併用可能な他のアダプターについて引き続き情報提供するとともに、当該事例に関する情報提供文書を配布している。なお、発生率は非常に低いものの、当該製品のリサーキュレーションチューブ接続口のフィルム溶着が不均一な状態となっていたことにより、使用中に瞬間的な圧力が作用したことで、溶着が不均一であった箇所からフィルムの剥離が進行し、酸素投与量の低下に至った可能性あることが判明した。当該事象を受けて、製造工程において溶着条件を変更した場合の検査体制が強化されている。以上より、既に製造販売業者等による対策がとられているものと判断する。